第9話 甘く甘く

――令和○年5月3日(月・祝) 深夜――


――シャアアアアアァァァァァァ……キュッ!


 ここはお風呂場、一頻ひとしきりお湯を、私は浴びる。お湯止め、シャンプーボトルを手に取り、頭髪を洗い始める。並行して思う、今日と言う、長い一日。


 午前、手作り手土産持参で、早坂莉緒の家へ。初めて出来た……友達……そう呼んで良い子たち、みんなお気に入り。そして私の特別、早坂、真美ちゃん。私の母性、真美ちゃんはくすぐる。だから真美ちゃんのこと、私は欲しくなって。だから心にピン留める、未来の私の真美ちゃんこども、この手に抱く未来を……


 シャンプーの次はコンディショナー。頭髪に塗り込み、浸透待つ。その間、手拭いに石鹸、溶かし付け、首筋から清め、始める。今日の振り返りも、続く。


 午後、水人の戦い、勝利、生還。二度抱き合え、嬉し泣き。そして結末で困惑。


『鈴城! 次は、負けねえからな! 首洗って、待ってろ!』

『次なんて、無いから。寝言とか言ってないで、寝・て・な・さ・い!』


 対戦相手、同じ教室、六角くん。地味尽くしの御大層、同じく、男装の沼端さん。この日一番の驚愕。二人の二面性、気付けぬこと、水人としばし、にらめっこ。そして沼端さん、いわく……


『ちょっとした行き違いがあったみたいでねー。もともと見合いうんぬんじゃなかったんだよねー』

『護衛のスカウトだったんだよねー。おまけでね、清川さんに将来のお相手いないなら、お世話しようかって話だったんだよねー』


 祖父様に白い目、集まる。


『早合点したのは、一美であろう』


 そこからは、清川家内の口喧嘩。勝利は祖母様。祖父様、項垂うなだれる。飽きれつつ、帰って行く沼端さん。学校での護衛、それは受諾。体操着に着がえる、等々などなど、女子だけのシチュエーション、その時だけだから。他の出番、六角くん持ち。そして……


『元五小組の女子の間で、清川さんの評判悪いのよねー。鈴城くんに素っ気なくしてたからって。だから清川さんに制裁くわえよーとか、話流れててねー。仲直りしてるよーって伝えてはみるけどー、ゴールデンウィーク明けの学校は気をつけてねー』


 去り際の沼端さん、爆弾を置いて行く。人の噂、如何ともし難く。水人と宿題に決める。


――キュッ――シュアアアアアァァァァァァ……キュッ!


 シャワー水栓再び開け、全身にお湯、私は浴びる。もろもろの洗剤、洗い流す。終われば、湯船に身を投じる。振り返りも、更に続く。


 水人は落とした槍、拾おうとして出来ず――そして判明、水人の怪我。槍落とした時、あの剣撃で。ひびか骨折か、祖父様の見立て、急ぎ病院へ。診断結果は右手、中指と薬指、二つの中手骨に罅、全治一月と。『よく刀剣掴んで、振り回せた』とは、主治医の感想。水人は盾、その稽古尋常に、あらず。出来なければ、死あるのみ、の覚悟……フンス!


 そして私、水人の着替え・食事・入浴・就寝、それらの介助、祖母様より獲得。その戦い、熾烈な口論。いくつかは期限付き、条件付き、だけど。


 私の入浴前、水人の入浴を介助。水人は腰に手拭い巻き、私は水着着用。一緒のお風呂、途切れる前、あの頃と比べ、逞しい水人。あくまで、背中流すだけ…………うん……うん……ニヘラ、おっと。水人、ちゃんと男の子………………逆上のぼせる前に、上がろう。


 水気をぬぐい、脱衣所へ。バスタオル使い、もっと水気拭き取り、肌着を着ける。洗面台と向かい合い、専用の洗剤使い洗顔、保湿クリーム塗る。髪を乾かし、香油軽く揉み込む。ふう、女子的入浴、時間掛かる。でも、水人のため、頑張ろう。そうして、水人と私の部屋へ戻る、胸の高鳴りと共に……



――令和○年5月3日(月・祝) 日付変更間近――


「……水人、お待たせ……」

「…………」


 水人と私の部屋戻り、水人に声掛ける。水人の入浴前、お布団敷き。水人のお布団の上、本人転がり……寝息だけ。その姿、ジトっと見る私。そして私のお布団……離されてる?!……慌て隣にくっ付ける。むぅ……水人の仕業しわざ


 自分のお布団、私も転がる。水人を見る……寝息だけ。コロン、水人へ向け、一回転。チラっ、水人を見る……また寝息だけ。コロン、水人へ向け、もう一回転。そしてピタっ、張り付き、添い寝姿勢。間近に水人、見る…………どうにか寝息だけ。でも、ピクリ動き、感じ。水人、寝たふり下手。そう来るなら、覚悟せよ!


 水人跨ぐよう、手と膝着き、覆い被さる私。まずは、癒しキス。水人の唇の端へ、口付ける。水人の下唇に沿い、チロチロ這わせる。微かに開く、水人のお口。水気求め、覗く隙間に差し入れる。出したり、入れたり、廻したり。開きは徐々に、拡張する。そして――ピタリ唇合わせ、強く息吸い込む。


 水人の呼吸、乱れを見せ。プハっと音漏らし、口を放し、咳き込み――


「ひどいよ、一美ちゃん」


 微かに涙目の水人、文句を言い。確かに悪戯気味に、施す癒し《キス》。でも酷いは水人。だから……


「……無視する水人、もっとひどい……」

「うう、ごめんよ。さっきのお風呂のこと、とっても恥ずかしくて、まともに一美ちゃんを見れそうになくて」


 言い募る私。申し訳なさからか、謝罪と理由、水人は答える。一緒の入浴、明日も明後日も続く、慣れて欲しい。けれど、やり過ぎ?…………拒否されたら、元も子もない。


「……極力、普通に、背中流す、約束……する……」

「お願い、だよ」


 水人と約束、明日から普通……ちぇっ。


「……でも、癒しキス、拒否権、なし……」

「えええ、ちょ、顔、抑えない――うぶ」


 再び口づける。強引に、勢いを付け、ピッタリ唇を、合わせる。話の途中、だから開いてるお口、そこに深く差し、込む。嘗め回す、絡める、遣り取りする、蹂躙。


……水人、美味……


 次第に水人、抵抗弱める。そして私の求め、応じ始め。恐る恐る、舐め返し、絡め返し、息を吐く。もっともっと、積極的に、私を求めて。


 次いで、水人に体重ね、抱きすくめる。私の行動に、いやいやの水人、でも放さない。未来の私の、真美ちゃんこどもに出会う。そのためにも、どんどん私に、溺れて欲しい。だから、手加減しない、から……

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TWINKLES-ON-DARKNESS ~盾の少年と槍の少女の憧憬~ 亖緒@4Owasabi @4Owasabi

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