読みやすくて面白い! 作り込まれたSF小説です!

第十七話までのレビューとなります。
 宇宙における最高位の文明を誇る二大惑星【ペンタス】と【テロメア】。前者は機械都市、後者は医術に特化した延命都市として私たちを迎え、これらの関係性に構築された緻密な世界観にまず惹き込まれます。

 この物語は、お茶目で温厚な人物【凛】が、義兄弟の【紅蓮】と共に、惑星ペンタスを旅する物語です。旅の途中、ペンタスの地殻に眠る秘密鉱石の存在や、脱出ポッドから姿を現した謎に満ちた美しき女性など、随所に散りばめられた伏線が、様々な張力で私たちを迎えるでしょう。その中で進行するミステリアスな展開から、人物や物事の相関が丁寧に結ばれていく感覚。その作風を好意的と捉える場面も多く見受けられるのではないでしょうか。

 特に申し上げたいのが、SFでは物語の設定が地の文として語られる箇所が多く見られがちですが、本作ではそんなイメージを払拭するかのような、圧倒的な読みやすさが感じられます。各話のボリューム、地の文(説明文)のバランス感覚が特に優れており、余計なストレスを感じさせない配慮が素晴らしいと思います。

 そして、花を連想させる登場人物の名前にも注目してみてください。そこから作者様の物語に賭ける思いが、この先々で花開き、混沌たる舞台色に鮮やかな彩りを添えて、物語に深みを与えることと私は推測します。

 ミステリアス要素を探る楽しさと、作り込まれた世界観に、あなたも気づけば魅了され、その無意識に捲るページの加速とともに惹き込まれてやまないことでしょう。

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