ド
「おはようございます」
葉桜になった木を見ながら登校する朝
『お前スカート折ってるだろ』
『おってませんよ〜!!』
門前で止められている同級生。
馬鹿だなぁそんな初日から
1年E組
窓側の前から2番目の席。結構気に入っている
♪……♪♪
チャイムがなった
「おはようございまーす。
今日は学年集会と身体測定だけなので授業はありません!
9時に体育館集合してくださーい」
花田実香 先生
言語文化担当の教師だ
“一緒にいこー!”
“名前なんて言うの?”
やばい。やばいよ周りが段々話し始めている
「あぁどうしよ…」
「…ッ?!」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
『すずかちゃんだよね?』
「あっ…そうだよそうだよ。ごめんね名前教えてくれる?」
『よかった!うちは歩宮奏!』
「かなでちゃん…か。可愛い名前だね」
『え?!ほんと?めっちゃ嬉しいありがと!
良かったら体育館まで一緒に行かん?』
「いいよ…!」
1年E組28番
歩宮奏
髪の毛はサラサラで声も透明。目もパッチリ。
関西の子かな…?
けどここ関西から離れてるし。
引っ越したのかな?なんでだろ
彼女に対する疑問がフツフツ湧き出てくる
「…」
『…』
「かなでちゃん!!」
『どした?!』
「もしかして関西から来た?」
『あ!うん!そうだよ!』
「やっぱり!語尾とか関西の方言なのかなぁって思って」
『あ!忘れてた!関西弁直そうって思ってたのに』
「えなんで?!すごい可愛いよ」
『えほんま?嬉しい』
「奏ちゃんは奏ちゃんのままでいいんだよ。」
『……』
「あ!ごめんねまだ会ったばっかりなのに上から」
『?!全然全然!ありがとうね』
これは完全にやらかした。
『すずかちゃん電車?』
「うん!かなでちゃんは?」
『うち自転車なんよ〜だから門前でバイバイだね』
「そうなんだ!そっか〜残念。」
『門まで一緒に帰ろ!』
「うん!」
『すずかちゃん。すずちゃんって呼んでいい?』
「うん!私もかなちゃんって呼んでいい?」
『もちろん!!』
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「ただいま」
誰もいない…か。
母との二人暮しも今日で200日目。
20xx年9月23日
この日私は初めて泣いた。
友達が引っ越すときも、卒業するときも何があっても泣かないって決めたのに、この日は無理だった。
『すずちゃんおはよー!』
「おはよ」
奏は偶然にも隣の席だった。
奏と一緒ならこの高校生活安心できる。そう確信できたのは…
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
『すずちゃんってどこ中だったの?』
『すずちゃんの得意教科なに?!』
『すずちゃんの好きな歌なにー?』
って
私のことを知ろうとしてくれている。
森内涼叶を知ろうとしてくれている。
名前を呼んでくれる、共感してくれる。
今までに出会ったことがない雰囲気の子だった。
私は今まで避けられてきた。邪魔者扱いされてきた
“ガリ勉”
“汚い”
“陰キャ”
“ぼっち”
“気持ち悪い”
“消えてくんないかな”
罵声を浴び続けた私は生きている意味が分からなかった。兄も亡くして。頼れる人がいなかった
そんな私と一緒に居てくれて、私を知ろうとしてくれる子なんていなかった。
だから、奏は私にとって大切な存在になる気がした。
だから、私は奏を知ろうとした。
風鈴の音 嘉島由瑠 @ruuu_na
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