風鈴の音
嘉島由瑠
𝄞
森内涼叶 一七歳 揺塔高校二年
「貴方は変な子だ」
「お前相変わらず変だな」
「変わった方ですね」
そうだ
「私は変な子だ」
いつも教室の角で1人。本を読むわけでもなく
ただただ窓から空を仰視している
私には取り柄がない
足も遅い
絵も下手
歌も下手
部活にも入ってない
可愛くもない
かっこよくもない
テストの順位も下から5本指で数えられる
傍からみたら
「教室の隅が唯一の住処である陰キャ」
というイメージなのだろう
だけどただ1つ、自慢できるものがある
それは
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
『ご入学おめでとうございます』
入学式のパンフレット
見出しには県内一の難関校に合格したことに対する賞賛の言葉が並んでいる
掲示されているクラス名簿を上から目でなぞる
「……森内森内…っと。32番か」
1年E組……私のクラスか。
1番窓側の席に座る。窓の向こうには広い空と大きな山。
「………」
担任が来るまでのクラスの空気。重圧だ
「ただいま」
結局誰にも声かけられなかったな。
あーあ、私のJKライフどうなるんだろ。また同じ思いはしたくない。
またあの……
『あらあら帰ってたの。おかえり。どうだったの?友達できた?』
「入学式なんだからできるわけないでしょ。もう寝る」
『え?まだ17時よ?ご飯できちゃうわよー?』
相変わらず今日もうるさい。ほっといてよ
ー23時38分ー
「うわ本当に寝てた。変な時間に起きちゃったな」
部屋の灯りを付ける。薄暗い部屋の壁には『絶対合格』と書かれた紙ばかりが貼ってある
「頑張ってたな。自分」
中学生の頃、頑張ることを知らなかった私にとって受験は壮大な壁だった。その事を誰よりも早く教えてくれたのは兄だった。
森内珠樹
半年前。不慮の事故で死んだ。
私とは違って皆から愛されていた。
私とは違って愛嬌があった。
私とは違って笑顔が素敵だった大好きな兄。
学年トップの成績、運動神経抜群、絵も歌も上手くて、サッカー部のキャプテンで、愛し合う人もいて。
でもどこか抜けているとこがあって、そこがまた良くて。死んじゃったのも人のためで。
生まれた時から死ぬ時まで、ずっと人のことばっかり1番に考えて、将来も警察官になりたいって。
そんな彼はいつも私と一緒に勉強してくれた。
喧嘩してもいつも真っ先に謝ってきて、私が泣いてたら直ぐに抱きしめてくれて。
大好きだった兄
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