2話目
「やぁ!君と会うのは昨夜ぶりかなぁ!」
くすくすと笑いながら椅子に座るる男の子は楽しそうに足をばたつかせている。どこから来たのか一匹の猫が男の子の膝上に飛び乗りちょこんと座り込むまるでぬいぐるみのような猫がじっと私を見つめてくる。
「夢守人…」
「ふふっ覚えてたんだね!やっぱりお姉さんは選ばれた人なんだね!」
「…ここは今まで何もなかったと思うけど…」
「…うーんここは夢のアーカイブ!紡がれた夢が一つの物語となって出来た本達を管理している所だよ!」
そう言って両手を広げながら説明してくれる男の子
「そこらにある本屋じゃないぞ…ここの本を読めるのは夢守人のみだ!」
「ね、猫が喋った…」
突然ぬいぐるみのような猫が私に向かって…喋り始めたので思わずビクッと反応してしまった。
「ふふ…驚いた!?」
「俺様は猫じゃない!ケットシーだ!」
そう言ってぴょんと膝から飛び降り二本足で立ちぷんぷんと怒りながらふんぞり返る猫から目を離せずにいた。
「ケットシー?」
「あぁ俺様は夢の番人!悪い奴から夢を守るのが仕事だ。」
「悪い奴って…?」
「それは夢魔だ!…ずっと人を眠りにつける悪い奴!」
「君はね、記憶をずっと見続けていたから夢魔に目を付けられていたんだ…なかなか寝てもちゃんと寝付けなかったでしょ…」
ここ最近の自分の情況を当てられてドキリとする。
「安心してよ!ここは誰も来ないし見つかることもない…夢守人や夢の番人しか立ち寄ることができないから」
「お前も選ばれた者みたいだしな!」
「…私どうなるの?」
「大丈夫だよ!ここを出れば現実へと戻る。そして夢の世界で夢守人として紡がれる夢を見守ってくれれば良いんだ!」
「お前も今日から夢守人としてしっかりやれよな!」
「そんな事急に言われても…」
「ここで断れば即夢魔に狙われて目を覚ますことはなくなる。お前に選択肢はないんだから良いからやってみろよ…」
急に言われても…なんだか脅されてるいような感じもするけど、今の説明からして私はもうじき死ぬのか死なないか…と選択肢を迫られているようでゾッとした…。
「死にはしないよ…ただ、生きて永遠に眠り続けるだけ…つまり死を迎えるまで目が覚めなくなるだけだよ…それはともかく、まずはこれを読んでみてよ」
そう言って手渡された白い本にどこか見覚えがあった。昨夜見た無色透明だった私の夢…というより記憶?といわれたものだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
✕△@$〃*Σ✼✩✻❉∈∞◯∅⊕≯≮≠∆∅⊄∂…
『おめでとう〜ようこそ!夢の世界へ』
青い髪の男の子が1人椅子に座って拍手していた。
『ねぇ、君ってば毎日記憶観てて疲れない?』
『誰?ここは何?』
パパラパラと男の子の周りで本が開かれ文字が紡がれていく
……………
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
途中まで文字化けしていた文章から突然昨日見た夢?が紡がれていた。
改めて言われていることがすべて本当だとわかり、本を読み終え、男の子に返すと決心して男の子とケット・シーにどうすれば良いのかと聞いてみる。
どこから出したのか男の子は1つのブレスレットを私に手渡し後はいつも通り寝るだけだと教えてくれた。このブレスレットを持っていると夢守人として夢が紡がれるのを見守ることが出来るらしい…どうやらここにも立ち寄ることが出来るらしい。
そしてブレスレットを受け取り、私は男の子たちと別れ自宅へ帰りいつも通り何事もなかったように家族と食事を取りお風呂へ入りそしてベッドへと潜る。
本当にいつもと変わらない日常。違うのは手元に1つのブレスレットが付いていることだけだった。
――――――――――
『こんばんは!お姉さん!夢の世界へようこそ!』
『よう!さっき振りだな!』
昼間と同じように二人で出迎えてくれる。
『こんばんは…よろしくね…えっと君の名前は?』
『僕の名前はレーヴ!』
『レーヴ君?』
『そう!ほら見てよ!始まったよ!夢紡ぎ!』
『面白いよな!』
そう言って、指差し私に始まった事を教えてくれる。
最初に見たときと同じ様に新しい本がパラパラと開き文字が紡がれていく。
レーヴとケットシーに言われ指を差したほうへと視線を移す。
そこには夢が紡がれ出来上がっていく本と新しく紡がれていく本を楽しそうに眺めているレーヴ君とケットシー
そして私も夢守人の仲間入りとなりレーヴと共に夢で出来た本の管理を始めることになった。
――――――――――――
現実でははたから見ればただ眠っている私、あれから体調も良くなり、倒れることもなくなり悪夢のような夢を見ることはなくなった。
――――――――――――
今度は私が誰かを出迎える番が来るまでそれはいつになるのかわからないけど、私はレーヴと共に夢の世界で夢守人として夢紡ぎを見守るのだ。
『こんばんは…ようこそ夢の世界へ!』
夢守人 有葵 @aki962130
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