環境調査の目的でやってきた惑星。
タナカと相棒アンドロイドのノイは、いま危機的な状況にいた。
これは葛藤を抱えるアンドロイドと熱い人間の物語だ。
良かったのはキャラクター描写だ。
きちんとキャラクターに過去を感じられて立体的に見せている点、そして深い葛藤から来るドラマ性が本作の魅力だろう。
さらに置かれているスライム型モンスターにノイが捕まっている危機的状況がストーリーに適度な緊張感を与えている。
アンドロイド法という常識がありながら、ノイを見捨てないタナカ。彼の誰にでも公平で優しい態度は彼の言葉をもっと聞きたいと思わせてくれる、そんな深い魅力がある。
さらにヒューマンドラマ。その熱い描写は読む者の心を震わせ、満たしてくれる。
テーマはおそらくボーダーを超えた友情なのではなかろうか。アンドロイドと人間、異なる者同士が生きていくこと、裏切らず仲違いせずに共に歩んでいくこと、そうしたときに私たちは誰にもなれる、何にでもなれるのだと教えてくれる。
そのように見たときにノイの葛藤やタイトルを見直すとまた違った面が見えてくるだろう。
おすすめの作品です。
とある危険な惑星への不時着を余儀なくされた外宇宙環境調査員・タナカとノイ。この惑星に生息するモンスターに捕らえられてしまったアンドロイドのノイを、人間であるタナカが救出しようと奮闘する場面から物語は始まります。
あくまで法に従って人間を優先し、己を見捨てるように笑顔で促すノイと、その「人間を優先するのが当たり前」という常識を良しとせずに頑として拒み、己の身の危険も顧みずに必死でノイを救おうとするタナカ。ノイの合理的な主張にも納得できますが、タナカの非合理的ながら情の深いまっすぐな心にも共感でき、緊迫感のある展開と相まって、読者に強い葛藤を覚えさせます。
果たしてタナカは、残された時間と限られた弾数で、ノイを助け出すことができるのか――その答えは、ご自分の目で確かめていただくとして。
物語の一番の見どころはここから。モンスターに呑まれながら、それでも笑っていたノイの本心を知ったとき、胸と眦にじわりと熱いものがこみ上げました。
これぞ理想の人間×アンドロイドバディと思わせてくれる、爽やかな読後感の最高に素敵な物語。ぜひ、腰を据えてじっくりとお楽しみください。