忠告

もっちゃん(元貴)

タ・ス・ケ・テ


最近、息子の真実人まなとが、変なことを言い始めた。


「ママー、きょうも、あそこに、ナニカいるよー!」


部屋の隅の方に指を刺して、そう言ってきた。


「まなと!それは、相手にしてはダメなものよ!わかった?」


「でも‥‥『たすけて』って、きこえるからたすけないと、かわいそうだよ‥」


まなとが心配そうな表情をしている。


「まなとは優しい子ね、でもね、それは現実の人に向けなさい、わかった?」


おそらく、見えてはいけないものが、見えるのだろう、ここは、しっかりと相手にしてはダメだと言わないと、後で、まなとに何か危害が加わったら大変だ。


「うん、ママ、わかった!」


よかった。


まなとは、理解してくれたみたいだ。




あっ!そう言えば、買い物にいかないと、今日の晩御飯がなかったわね。


うっかりしていたわ。



「まなと、ママは買い物に行かないといけないから、ちゃんとお留守番していてね?」



「うん!おりこうにしてるー」


「じゃあ、ママ行ってくるわ!」



まだ、身長も低いし、ドアも1人では、開けられないから外に行く可能性も低いし、近所の商店街に行くだけだから、1人にしても大丈夫よね。


ちょっと不安になった母親だったが、買い物に出かけたのだった。



ーーバタン



玄関の扉が閉まった。


母親が出かけた後すぐに



『タ・ス・ケ・テ・ダ・レ・カ!!!』



「わぁぁ!!きゅうにどうしたの?」


まなとは、部屋の隅にいるナニカに話しかけた。

 


『ボ・ク・ハ・コ・ロ・サ・タ・ママ・ニ』




「えっ!ママ? ママって、だれのママ?」



『ママ・ハ・ママ』



「もしかして、ボクのママ?」



『ソ・ウ・ダ・ヨ!』



「マ、ママは、そんなことしないよ!!」




『ホ・ン・ト・ダ・ヨ・ニ・ゲ・テ・コ・コ・カ・ラ・ス・グ・ニ』



「うぅ‥‥どうして、そんなこというの‥‥ママは、優しいママだよ‥」



泣き始める、まなと。



『ダッテ・ボ・ク・ハ・キ・ミ・ダ・カ・ラ』



いつも、見えていたナニカが、そう言った後、部屋から忽然と消えたのだ。


「うぇ? どこいったの?」


涙目のまなとが、辺りをキョロキョロ見回すが、いない。


すると



ーーガチャ



玄関の扉が開いた。



母親が帰ってきた。



「まなとー、ただいまー!ちゃんとお留守番できた?」



「うん!ママ、ちゃんと、まっていたよ」



「それは、よかったわ、えらいわね、まなと」

 

まなとを抱きしめる母親。


「じゃ、晩御飯にするわね、出来るまで、まっていてね?」



「わかった!」



「さぁ!お利口さんな、まなとのために、今日は、まなとの好きなハンバーグにしようかしらね」



「わーいーー!」


喜んで、笑顔になるまなと。



晩御飯の準備に取り掛かる母親、その手には、包丁が握られていた。


         ◇



その後、このアパートの隣の住民から、警察に通報があった。



その住民の話によると、幼い子供の声で、こう隣の部屋から聞こえてきたそうだ。





      『タ・ス・ケ・テ』






          終





















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

忠告 もっちゃん(元貴) @moChaN315

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ