イライラ発電
三好祐貴
イライラ発電
2023年、電力需給のひっ迫は、深刻な社会問題となっていた。この状況を打開するため、政府の対策委員会は大手民間企業と共に、新たな発電方法の開発に尽力し、それに成功した。この新開発の発電方法とは、その名もイライラ発電。これは人々のイライラの結果として生じる貧乏ゆすりのエネルギーを電力に変換させるという画期的な発電方法であった。いみじくも、その年、節電要請及び電気料金の値上げにより、人々のイライラは頂点に達していた。人々の貧乏ゆすりの頻度、持続時間、激しさ等のあらゆる指数は大幅に上昇し、特に、速度に関しては、前年の一人あたり平均2.4ユレユレ(回/秒)から9.1ユレユレと、前年度比で300パーセント近くの上昇を記録するという、イライラ発電にとっては打って付けの環境が整っていた。このお陰で、イライラ発電は、発電開始、初月から、従来のそれぞれの発電方法での電力総生産量の合計を凌ぐ、膨大な量の電力生産に成功し、電力不足問題は解消された...かのように思われたのだが...。
電力需給の改善に伴い、人々のイライラも解消されてしまい、結果として、人々の貧乏ゆすりは激減、イライラ発電での電力供給量も瞬く間に低下し、それにより、あろう事か、電力不足問題は再発してしまったのである。ただ、この電力不足問題の再発に伴う、再度の節電要請や電気料金の値上で、またもや人々のイライラは増加した。もちろん、これにより、イライラ発電での電力生産量は回復し、再び、電力問題は解消へと向かったのだ。しかし、言うまでもなく、電力需給の改善により、またもや人々のイライラは減少、それに伴い、またもやイライラ発電での電力生産量も減少し...、といった具合に、イライラ発電の開発により、電力供給の安定した状態と不足状態は、無限に繰り返されるという事態となった。かくして、イライラ発電は電力問題の完全かつ最終的な解決策とはならなかったが、イライラ発電により、近年より政府が掲げていた、循環型社会を作るという目標だけは、奇しくも達成されるに至ったのである。
イライラ発電 三好祐貴 @yuki_miyoshi
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