シスター・クオン
ギルド加入の翌日。
いつもより少し早く目が覚めた。
これから冒険の日々が始まるかと思うと居ても立っても居られない気分だった。
まずは顔を洗うために水の魔水晶に魔力を通す。こうすることで水が出てくるという生活必需品のようなものだ。
次に寝癖を整えるために鏡を見る。そこには黒髪に黒い角、碧い眼の少年の姿が映った。
光を反射しやすい魔鉱石を削り出し磨いて作るもので人類の遺物の模造品らしい。
一通り身支度を済ませ家を出る。今日はギルドに行く前に教会へ行くと決めていた。
教会には幼い俺を拾って育ててくれたシスターがいる。こういう節目の日には顔を見せに行くことにしている。
家を出てしばらく歩くと商店街が見えてくる。
俺が住んでいるのはオーストラリアと呼ばれる大陸の北部、地下に広がる街「トリスティア」。
最初のアカシアの年輪が見つかったその内容から「終焉の大地」、独自進化した魔獣が多く棲息していることから「魔獣の楽園」とも呼ばれる場所だ。
この付近では昼間は魔力の光が降り注ぎまともに活動することができない。そのため地下に街を作り生活をしている。
街は居住区画と商業区画に分かれていて、
しかし教会だけは例外で、街が構築される前からあるらしく商業区画の外れにポツンと建っている。
しばらく歩いて早朝の商店街の喧騒を抜けると俺の育った教会が見えてきた。
「クオンさん、いる?」
教会に入り声を掛ける。
「あら?セツナじゃない、今日は早いわね」
奥から現れたのは腰まで届く長い白髪に横に長い耳、修道服に身を包んだ女性、シスターのクオンさんだ。
過去に怪我で視力を失っていて目元を隠すように白い布を巻いている。だが探知魔法の応用で周りの状況が把握出来るらしく生活に困ることは無いという。
「あのね、クオンさん。昨日
「あら、そうなのね。昔からギルドに入って冒険がしたいって言っていたものね。おめでとう、頑張るのよ」
「ありがとうクオンさん、俺頑張るよ」
「セツナはもうご飯は食べた?よかったら食べていきなさいな」
そうしてこれからの話をしながらクオンさんの作った朝食を食べた。
昔から変わらない味で安心感のある時間になった。
「そうだ、セツナこれを持っていきなさい。ちょっとした防護魔法の掛かったお守りみたいなものよ」
そう言って小さな紅い魔晶石のついたペンダントを渡された。
「昔、友達に貰ったものなのだけど。きっと私が持っているよりいいと思うから」
「ありがとう、大切にするよ」
それからしばらく話をして教会を出る。
「それじゃ、クオンさん。いってきます」
「いってらっしゃい、無茶はしちゃダメよ?」
「わかってるよ、それじゃ」
そう言って教会を後にした。
僕らの終末日記~ゆめにっき~ 猫のゆき @yukky00
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