そこで聴いた音は―――。

書き言葉でありながら、
言葉で語りかけてくるのと同時に、耳にしっとり響く作品です。

主人公の閉塞感、緩やかな絶望感、無情な現実。
このやるせなさは、生きる私たちにも、差すものではないでしょうか。

精緻な筆致で、そうした主人公の感情と情景が、
淡々と胸に染み込んでいきます。

物語にはひとつの結末が用意されていますが、
無理をした感はなく、ごく自然にこちらに伝わる、
味わい深い作品です。

雨のASMRを聴きながら、再読したいと思います。

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