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 信者達の列は続々と聳え立つ発射台へ向かう。

次々にロケットへと乗り込む彼らの元に宇宙服に身を包んだ白鳥代表もやってくる。

「皆さん、遂に先史時代からの悲願が成就します」とヘルメットを片手に代表が語りかける。すると、信者達は一斉に振り返り、興奮気味に答える。

「ええ!この日のために我々は生きてきたのですから」と口々に言う。

 代表は満足そうに微笑むと、信者達に向かって言った。

「我々の未来は神が導いてくれることでしょう」

 聞き入る彼らの最後尾で唐突に鈍い音が空に散る。

白鳥が音のした方に顔を向けると、ヘルメットを脱いだ影井光が髪を風になびかせていた。

 彼女は白鳥を睨み付けながら、勇み出てくる。その怒りに満ちた様子に周りの信者達は一瞬戸惑いつつも乗り込み続ける。

「故郷がそんなに大事?」と影井が尋ねると、白鳥は不敵な笑みを浮かべた。

「重要だ。我々に似せて造られた地人の力は脅威となっている」

 彼の答えに影井は目を丸くした。

「彼らは平和を愛している!危なくなんてない!」と叫ぶが、代表は静かに首を横に振るだけだった。

「君は未だ子供なんですよ。勉強なさい、彼らは凶暴です。歴史が証明しています」と代表は言った。

 影井は息を吞むと、その言葉の意味を理解せざるを得なかった。

「共存の道だって!」と彼女が反論するが、白鳥の考えは変わらなかった。

彼は静かにため息をつきながら答える。

「理想だけでは何も解決しないんですよ」と言った後、乗機口に足をかける。

「血を分けた者達との別れは心苦しいですが、致し方ありません。」

「待ってください!」影井は追い縋るが、彼は無慈悲に払い除ける。

 その時だ、警報音が鳴り響く。

直後。鉄扉を軽々と倒して、装甲強化服を身に纏った警察官達が突入してくる。

白鳥は困惑した様子を見せながらも毅然とした態度で向き合った。

「これはどういうことですか?私達は何もしていませんよ」

「貴様らは犯罪者だ」と先頭の倉本が答える。

白鳥はその宣告を嘲笑うかのように肩を竦めた。

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宇宙を見下ろす私達 @HajimeYokogawa

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