骨太の上質な冒険ストーリー! ……それに、気品も付け加えて。

舞台は異世界。剣と魔法、そして冒険者の活躍する世界です。
主人公の若い女魔法使い:ポーリンがとある要人警護依頼を受けることから、物語が動き始めます。

しかし、この依頼。どうも普通じゃありません。
特別な紹介無しには入れないギルドで扱っている上、報酬は最上級。
そして大事な条件がもう一つ。
「偏見のないものに限る」……?
……なにか、事情がありそうな予感がビシビシきます。

それもそのはず。
なんと、この依頼主は〈本を読むゴブリン〉こと、ゴブリン王国の王子様だったのですから!

さて、ポーリンはこの一風変わった要人警護、無事にこなせるのでしょうか……?


ゴブリンといえば、粗野な悪役のイメージが強いキャラクターだったのですが、この〈本を読むゴブリン〉ことチーグは、その固定概念をあっさり打ち壊してくれました。
お気に入りの本の一節をそらんじたり、王子の肩書に恥じぬ聡明さや勇敢さを備えていたり……。彼の「気品も付け加えたい」という一言には思わず痺れてしまいました!

そして、主人公のポーリンも、骨太のキャラクターです。
正式に一人前と認められてはいないものの、才能と、根性と、度胸にあふれた彼女は、旅の中でみるみる成長していきます。強く、熱く燃える炎の魔法が、彼女の心根とよく似あいます。

最後に。
作品を通して考えさせられたのが「名前」……肩書、とでもいうのでしょうか。自分を自分たらしめる呼び名というものです。
まだ王位についていないゴブリンと、若い魔法使い。
彼らが出会うのは、かつての肩書を失った者や、肩書に縁のなかった者など様々です。
旅の果てに、彼らが得た己の名前とは、なんだったのでしょうか……そんなことを考えてしまいました。

とても上質な冒険物語です。おすすめですよ!