ざしきわらし
真田真実
第1話
私の叔父がまだ若かったころの話。
叔父の会社には公然の秘密があったらしい。
当時、おじが勤めていた会社の寮にはざしきわらしがいたというのだ。
叔父の会社は1階が事務所で2階が寮という作りの職場で、叔父は2階の寮で2人の同僚と暮らしていた。
ざしきわらしの姿は誰にも見えなかったが、その存在は感じられたらしく、昼間は2階の寮のドアをドンドン叩いたり、寮と事務所を繋ぐ階段をパタパタとの足音を立て騒いでいたという。
もちろん、寮の中でもざしきわらしはいろいろと叔父らにちょっかいを出していたらしいが、ざしきわらしにも好き嫌いがあるらしく、2人のうち1人はまったく気配も感じず、もう1人は部屋の物が移動するという小さないたずらをされ、叔父は寝ている布団の縁を歩き回られたり服の裾を引っ張られたりしていたらしい。
入社してすぐ同僚が社長にいつもざしきわらしに小さないたずらをされて困っていると話をしたが、社長はざしきわらしがいるからうちはギリギリ頑張っていられる、この秘密が余所にバレたらうちは立ち行かなくなるとのらりくらりとはぐらかされたらしい。
そんなある日、3人で飲みに行く機会があり3人は事務所の近くの居酒屋へ連れ立って行った。
テーブル席に叔父と向かいに同僚2人で座り瓶ビールを注文したらビールと一緒にグラスが4つと突き出しが4つ出てきたらしい。
ざしきわらしがとうとう外にまでついて来るようになったと叔父は懐かしそうに話すのだが、ざしきわらしは子どもだからビール飲む時にコップは出てこないのではと私がツッコミをいれると神様だから御神酒だったんだよ神様だって秘密のひとつやふたつあるさのひと言で片付けられた。
ざしきわらし 真田真実 @ms1055
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます