僕の秘密とあの子の秘密

桃もちみいか(天音葵葉)

ツンな彼女

 ある秋晴れの土曜日――。


 僕は一人で電車に乗って、遊園地の一角にあるショップに来ていた。


 最っ高にウキウキな気分だ。


 ここは東京、ドーム型の野球場や遊園地のある超有名スポット、東京ドー厶シティである。


 高校生の僕には秘密がある。


 今日は一人でイベントにやって来ていた。

 東京ドームシティでやるイベントといったら、知る人ぞ知る、うん十年の歴史がある戦隊ヒーローのショーだ。


 僕の秘密――!

 それは、戦隊ヒーローファンだってこと!


 誰にも打ち明けていない秘密だよ。

 あっ、訂正。前言撤回です。

 家族は黙認しているんだ。


 僕の部屋に並ぶフィギュアや変身グッズの数々。癒やしであり、いつでもご機嫌になれるハッピーアイテムだ。


 フッフッフ〜ッ!

 今日は新しい戦隊ヒーローのお披露目会なんだ〜!

 思わず興奮してきて、僕は鼻息が荒くなっちゃった。

 いけない、いけない。


 わくわくわく、ドキドキドキさ。


 僕のバイト代のほとんどがヒーローグッズやヒーローショーの代金になる。


 家族以外には誰にも知られちゃいけない僕の秘密。

 特に意地悪な哀川海荷あいかわうみかには、知られたくない。


 あいつ、僕にばっかり意地悪してくるんだよな〜。


 僕はショーの始まる時間前にショップを覗いていた。

 新ヒーローの5色戦隊ファイブガンマンのフィギュアを手に取った時だった。


「うぎゃぁ、哀川あいかわっ!?」

「ぎゃあっ、江藤えとう!」


 最悪だ、最悪だよ。

 隣でフィギュアを触ってんの、同じクラスの哀川じゃん。


 ――んっ? 待てよ。


「私が戦隊ヒーローが大大大好きなこと、黙ってなさいよね」


 僕の胸ぐらを掴んだ哀川海荷あいかわうみかの顔は真っ赤っかだった。


「哀川も、もしかして戦隊ヒーローが大好きなんだ?」

「だ・ま・れ! 黙りなさいよ?」


 僕は心のなかでニヤリと微笑んでいた。

 意地悪な哀川の弱みを握って、天にも昇る気持ちだった。



 だが、この時の僕は知らなかった。







『ふふふっ、江藤! 観念なさい。じつは私、江藤も戦隊ヒーロー好きだってことを、ずーっとずーっと前から勘づいていたのよっ。さぁ、私と付き合うのです。江藤!』


 哀川海荷は仁王立ち、人差し指をびしっと向けてくる。



 ……まさか――!


 この哀川海荷と仲良くなって、しか〜も、告白されて付き合うことになるなんて。


 哀川海荷はただのツンデレだった。


 ……もう一つの秘密発覚だ。 


 そう――、僕のことが。


 哀川海荷が僕のことが大好きになってただなんて、ぜんぜん知らなかったんだ。



    おしまい♪

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