第18話 それじゃあ仕方ないよね

女子だけで話すと言われて一人寂しく部屋で待っている朝日ですどうも。


女子だけで話すってさ、今の家にいる俺以外の全員じゃん? 男子は俺以外居ないし完全に俺だけが迫害されてんだよね。ずっと怜と一緒に居たからあれだけど、一人で過ごすのってガチでつまらないな……何をすればいいのか分からないしそもそも一人じゃできることも無いだろう。


だからと言って向こうに行くのは絶対に禁止事項である。まぁでも、これが怜が居なかった場合の俺だったのかなと考えると耐えないとって思う。


「朝日ー! 詩乃ちゃんが見せたい服あるらしいから真夜さんの部屋に来てー!」


「詩乃って服とか気にするタイプだったっけ……。まぁいいか、すぐ行く!」


真夜姉の部屋に入ると全員がそこには居て俺が五歳の頃のアルバム? が開かれていた。てか、肝心の詩乃が隠れてるってどうなんだろ、そんな恥ずかしい服でも着たのか?


「さぁ弟よ、あたし達がコーディネートした詩乃ちゃんを見て感想を述べるがいい」


「いやどこにも居ないじゃん、見なくても似合ってるだろうなとは思うけど、折角なら見たいよね。ということで真夜姉の百合本が隠されてるベットの下から出てこい」


気づいた頃には既に俺は真夜姉に叩かれていた。恐ろしく早い手刀……俺は見逃したね。


「次余計なこと言ったらこれじゃ済まさんからなマジで」


「はい、マジすいませんでした」


というか俺はここに姉さん達がコーディネートした詩乃を見に来たのに、その肝心の詩乃が隠れたままだからなぁ……。


「せっかく着替えたのに見せなくていいの? 詩乃ちゃんは朝日に見せるために着替えたんでしょ」


「そ、そうだけどいざ朝日に見せると思うと恥ずかしくて……。こんな服初めて着るしもしかしたら私に似合ってないんじゃないかって」


「似合うよ、それは僕が……保証するから」


正直真昼姉がコーディネートして似合わないってことはありえない。常に服を見ている真昼姉はその人に一番似合う服を選んでるし、そもそも詩乃がどんな服でも似合うほどに可愛いんだからもっと誇ってもいいと思う。


ようやく出てきた詩乃が着ていた服は怜も着させられたことがある肩が出ている薄目のワンピースだった。やっぱり真昼姉は服に関しては誰も勝てないな……今の時期、詩乃に一番似合う服をちゃんと理解してる。


「それで、我が弟はどう思う?」


「詩乃に似合ってるし可愛いと思うぞ。この前言ってた片思いしてる人も可愛いって言ってくれるんじゃないかな」


「そういえばこいつメイクする時普通に女子の顔とか手に触れてるから可愛いって言うくらい恥ずかしくないのか。うちが言うのもなんだけどさ、朝日はもっと恋愛のことを知った方がいいと思うよ?」


恋愛のことは一応知ってるつもりだ、中学の頃は恋愛に無縁だったわけじゃない。怜も知ってると思うが中学時代俺は何回か告白をされたことがある。

 ︎︎まぁ俺はその告白が罰ゲームだったってことを知っていたしもちろん断った……そういう罰ゲームの話をするなら誰もいないところでするべきだったな。


「俺は嘘告しかされたことがないからな、告白されてもそういうのを疑う体になってるんだ。人の気持ちを疑うくらいなら最初から全部断る方がいい、そもそも今はVTuberだからどっちにしろ無理だ」


まぁでも……俺は本当に俺のことが好きで、偽りのない告白だってわかった時はVTuberを辞める決意だって固まっている。凍夜さんに恋愛は厳しいと言われた日から俺はそう決めていた。


、そういう事だ。別に詩乃は俺の一番最初の友達だ、付き合わなくたって既に特別な関係なんだ……安心してくれ、俺が離れることは無いさ」


「そっか……それじゃあ仕方ないよね」


泣きそうになっている詩乃の耳元で俺は「お前の気持ちに答えれる時が来たら俺はVTuberを辞める」そう言って俺は部屋から出た。



§



詩乃の片思い相手が俺じゃないかとは結構前から薄々と気づいてはいたし、詩乃の思いが偽りじゃないことをわかる。ただ……もし付き合ったとしても俺は詩乃のことを一番に考えられるか分からなかった。

 ︎︎俺は怜か詩乃のどっちが良いかと問われると答えられる自信がなかった、どちらかを二番目にできるようになるまでは付き合わない方がいい。


「詩乃か、怜か……。俺にとって二人とも必要不可欠な大切な人だし、どちらかの関係が崩れるかもと考えるとどうしてもなぁ……」


そうだな……今はお泊まり会だしこの事は一旦忘れよう。お泊まり会が終わったあとに俺は事務所に行ってやらないといけないことをするとしよう。



§



「詩乃ちゃん、VTuberっていうのはそういうものだから仕方ないんだよ。私はずっと幼馴染のままで居るつもりだけど、詩乃ちゃんはどうせまだ諦められないでしょ?」


「うん、ずっと前から好きだったんだから完全に振られたわけじゃない以上は諦めない。それに希望は朝日自身から示してくれたからね」

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幼馴染のVTuber配信に一度だけ出演した結果、好評で俺もVTuberをすることになった件 桜木紡 @pokk7

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