八尺様みたいなやつの話

 俺の生まれ故郷の村には八尺様みたいなやつがいた。

 もう村はダムになったから、今は多分その八尺様みたいなやつもダムの中にいると思う。どういう風に八尺様みたいだったかというと、とにかく背がデカくて、人が何年かに一度行方不明になるとあいつのせいだと言われた。いつ出てくるかはわかんなくて、どうしたら助かるとかもわかんないから、台風みたいなもんだと思う。

 あいつが本当はなんて名前なのか、俺は知らない。じいちゃんは知ってたみたいだけど、俺が五歳の頃にはよぼよぼで何を言ってるか聞き取れなかった。ただ、最後に別れた時に「二度と近づいちゃならん」と言ってるのはちゃんと聞き取れたから感謝してる。だから俺はずっと東京にいる。去年肝試しと里帰りをいっぺんにやるとか言って出かけた従兄弟は死んだらしい。八尺様みたいなやつは八尺様より全然デカくてダムの中にいても肩から上が出そうな大きさだったから、普通にやられたんだと思う。

 あいつがいるダムがどこかは書けないけど、マジでヤバいからみんなも近付かない方がいい。山には何かがいる。

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情報のとっ散らかったホラー小説 いわししゃも @iwashi3u

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