卓と蘭の秘密

烏川 ハル

卓と蘭の秘密

   

「出来たよ。砂のお城だ」

「わあ、大きい。お兄ちゃん、すごーい!」

 公園の砂場で、幼い息子と娘が遊んでいる。

 ベンチに座って、二人の様子を微笑ましく眺めている私。

 はたから見れば、仲睦まじい親子のように見えるのだろうか。


 兄のたくと妹のらん

 確かに卓は、私によく懐いてくれているが……。

 実は私とは血が繋がっていないのだ。夫と前妻の亜子あこさんとの間に生まれた子供なのだから。

 亜子さんが事故で亡くなったのは、まだ卓が生まれて間もない赤ちゃんの頃。私が継母になったのもまだ彼が物心つかない頃だったので、どうやら卓は亜子さんについて全く覚えていないらしい。

 一方、蘭が生まれたのは私の再婚後。当然、私がおなかを痛めて産んだ子供だ。

 いわゆる「腹違いの兄妹きょうだい」だとしても、二人とも本当に仲が良くて、蘭に至っては時々「大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになる!」と言い出すほど。卓は「残念だけど、血の繋がった兄妹きょうだいは結婚できないんだ」と返しているが、まだ幼い子供なのに、一体どこでそんな知識を覚えてきたのだろう。


 それだけ二人の仲が良いのだから、あえて卓に実母のことを思い出させる必要もない。卓と蘭に対しては「二人は父も母も同じ、普通の兄妹きょうだい」ということにしておこう。

 夫と相談して、そう決めたのだが……。


 実は夫にも隠したままの、さらなる秘密がある。

 夫と結婚後に出来た子供だけれど、蘭の血縁上の父親は夫ではないのだ。だから卓と蘭には、血の繋がりは全くないわけで……。


「大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになる!」

「残念だけど、血の繋がった兄妹きょうだいは結婚できないんだ」

 という二人の会話を耳にするたびに、私は少し複雑な気持ちになる。




(「卓と蘭の秘密」完)

   

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卓と蘭の秘密 烏川 ハル @haru_karasugawa

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