第4話 状況整理

 制服姿で髪の長い少女は、しばらく逡巡してから。

柏原かしわばら瑠璃るりよ」

 と言った。


「瑠璃―― ?! 」

「なによ? 」

「い、いや、何でもない。 こんな廃墟で人に会うとは思わなくて、驚いたんだ…… 」

「ふぅん」


 柏原瑠璃。 

 儀式に巻き込まれて死んだ妹への弔いと称して、この恐ろしい四憑小学校の中でメイン登場人物3人、サブキャラ4人を殺害する可能性のある、要注意な殺人鬼の少女だ。

 こんな奴に会ってしまうなんて…… 転生早々、恐ろしい状況がすぎる。


 しかし、ゲーム中盤に登場するはずの彼女が、なんでこのエリアに居るんだ…… ?

 とにかく、彼女の殺害対象にならない為に、振る舞いには注意しよう。


 俺は何も知らぬ顔で

「瑠璃、ここがどこか分かる? 俺は目を覚ましたら、突然こんな廃墟に居てさ」

「…… ふぅん、そう、あんたも――。  私もよくわからない。 わかるのは、ここが四憑小学校ってことだけね」

「あぁ、そこの張り紙には『四憑小学校』って書いてあるね…… 瑠璃も、気が付いたらここに? 」

「そうよ」


 彼女は会話にきちんと応じてくれる。 どうやら、ゲームで見た時よりも温厚なようだ。

「そっか、とりあえず帰りたいんだけど、一緒に外に出ない? 」

 俺は、それが無理だと分かっているが、瑠璃に移動を提案した。


 まずはプレイヤーである自分が昇降口に行かなくては、イベントが進行しない。 殺人鬼である瑠璃に出会ってしまった以上、早く他の登場人物にも会っておきたい。


 しかし彼女の反応は

「出るのは無理。 さっき昇降口を押してみたけど、動きもしないし、ガラスにひびも入らなかったわ。 もう確かめたかもだけど、窓も同じよ」

「え?! 」

「ちょっと、大きな声はやめて! 」

「ご、ごめん」

「……不思議なことにね。 こういうのって、呪いとかそういうやつなのかな」


 俺は瑠璃の話を聞いて、驚きを隠せなかった

「いま昇降口って―― そう言ったの? 」

「ん? そうよ。 あぁ、『数人で』っていうのは、他にも居るのよ、ここに連れてこられた奴らとかが」


 俺は驚いた。 既に昇降口のイベントが終わっている?!

 ということは……


「なぁ、さっきこの教室に慌てて入ってきたよな? 何かあったのか? 」

「信じられないかもしれないけど、変な幽霊みたいなのが居たのよ」

「幽霊…… 」


「そいつのせいで、みんなバラバラになっちゃったわ―― 一人、実際にバラバラになった女の子が居たけど…… 」

「は? 」

「逃げるとき、転んだ子がいて―― その子、悲鳴を上げながら…… 」

 瑠璃が言い淀んだ。


 初イベントでしかも死人?

「どんな?! どんな子だった?! 」

「えぇっ? 暗くて初対面だったけど、ライトで照らしたときの、赤い髪飾りが印象的だったわ」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ホラーミステリーの世界に転生したけど、たぶん俺の他に転生者がいる。 ひたかのみつ @hitakanomitsu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ