第10話

すると突然グレッグさんから声を掛けられたのだ。

「おい、大丈夫か?」と言われたので慌てて返事をすることにしたのだがその時だったた!地面が大きく揺れ始めたかと思うと目の前に誰かの影が見えたのだ。

その影は深い魔法帽を被っており、手には杖を持っていることから魔法使いであることが分かった。

「何者ですか!?」

私が尋ねると相手は無言のままこちらに向かってきたかと思うといきなり攻撃を仕掛けてきたのだ!咄嵯のことに反応できなかった私たちは、避けることができなかったのだが何とか直撃は免れたものの攻撃を受けてしまったことでその場に倒れ込んでしまったのである。それを見たグレッグさんとメアリーさんは慌てて駆けつけてくれたのだがそれでも状況が変わることはなかった。なぜなら相手が全く攻撃の手を緩めることなく次々と魔法を放ってくるからである..........

このままではいけないと思った私は立ち上がり剣を構えたのだがそこで再び敵の攻撃が始まったのだ!今度は氷の矢が私たちに襲い掛かってきたのだが何とか避けることができたものの次に飛んできたのは炎の玉であった!その大きさや熱量から考えて当たったらひとたまりもないと思ったが、それでも避け続けるしかないと思っていたその時だった。

「もうやめろ!セイレン!」

テオフラトゥス様がそう叫びながら突然飛び出してきたのである!どうやら彼はこの人を知っているようだ..........しかしそんな私たちを無視して、彼女はなおも攻撃を続けて来るのだった。

「くっ!」と言いながらテオフラトゥス様が魔法を使って応戦しようとした。

「なぜこちらを狙ってくるんだ!目的はなんだ!」

しかしテオフラトゥス様の攻撃は届かなかったようで、逆に返り討ちにあってしまったのである。すると今度は私たちの方にも攻撃を仕掛けてきたのだ!咄嵯のことに反応できなかった私たちは避けることができず攻撃を受けてしまったのだが幸いにも軽い怪我で済んだようだ……

「彼女には私たちの想いが通じてないの..........?」

メアリーさんが呟くように言った。

確かに彼女の行動を見る限りでは、私たちを攻撃することしか考えていないように思える……一体なぜこんなことになってしまったのだろうか? そうこうしている間にも彼女は攻撃の手を緩めることはなく、次々と魔法を放ってくるのだ!このままではまずいと思った私は、彼女に向かって大声で叫んだのである。

「お願いだからやめて!」と必死に訴えかけるものの全く聞く耳を持ってくれないようだ……それどころかさらに激しくなる一方である……そしてとうとう限界を迎えたテオフラトゥス様が倒れてしまったところで私たちは完全に追い詰められてしまったのだ。

しかしその時だった!突然現れた何者かが彼女に向かって攻撃を仕掛けたのである!その一撃を受けたことで彼女は大きくバランスを崩して倒れ込んでしまったのだ。

一体何が起こったのか分からないまま呆然としていると、その人物は私たちの方を振り向いてこう言ったのである……

「大丈夫かい?」と心配そうに尋ねてきたその人は、どこかで見たことのあるような顔ぶれだった。「もしかして……アルヴィド?」と私が言うと、彼は笑いながら答えたのである。

「ああそうさ!久しぶりじゃないか」

彼は、幼少期の私の幼なじみだったのだ。

魔法を学ぶために海を渡ったと言っていたが、なぜここにいるのだろうか。

そう尋ねると、どうやら彼はテレパシーを感じて来てくれたらしいのだ。よくわからなかったが、私は感謝の意を伝えると共に状況を説明したところ、どうやら彼女は魔法で暴走している可能性があるということが分かり私たちは急いで彼女の元へ駆け寄ることにしたのである。そしてアルヴィドが呪文を唱えると彼女の体から黒い影のようなものが現れたかと思うとそのまま消え去ってしまったのだった。

その後で意識を取り戻した彼女に事情を聞くために、私たちは彼女を休ませることにしたのだった。

「ありがとう……助けてくれて」と礼を言う彼女に対してアルヴィドは笑みを浮かべて言ったのである。

「気にすることはないさ!それよりも君の力になれて嬉しいよ」と言いながら彼女の手を取ると優しく握ったのだ。

ああ、やっぱりそういうところは変わってないのね…としみじみ思い出す私だった。

その後で私が事情を説明するように促すと彼はゆっくりと話し始めたのである。

「実は…」と話し始めようとしたところで彼女は急に涙を流し始めたかと思うとそのまま泣き崩れてしまったのだがそれでも構わず話し続けたのだ。その内容とは次のようなものであった。

まず最初に彼女が暴走してしまった原因は、魔法の力を使いすぎてしまったことにあるということが分かった。つまり魔力が底をついてしまっていたことが原因だったようである。そして彼女が使う魔法は主に氷の属性であるらしいのだがその威力はかなり高いらしく一度暴走してしまうと止めることが難しいのだという……そのため普段は杖の中に封じ込めている状態で持ち歩いているのだそうだ。

しかし今回に限ってはそれが仇となってしまったようで、杖の中から出てしまったことで制御が効かなくなってしまったということらしいのである。

「なるほどな……」と言いながらグレッグさんが考え込むような仕草を見せると、メアリーさんも同じことを考えていたようで彼女に向かってこう言ったのである。

「とりあえずここから離れましょう……幸いにも被害は出ていませんから……」そう言って彼女を立ち上がらせるために手を差し伸べたのだった。しかし彼女はその手を握ろうとはしなかったのだ。それどころか首を横に振って拒否したのである。

「どうして?早く行きましょう」

私が言うと今度は首を縦に振ったので私たちはそのまま街へと戻ることになったのである。道中ではずっと沈黙が続いたままだったのだが、ようやく口を開いたかと思うと驚くべきことを口にしたのであった。

それは、彼女は遠方から来ているため、一度帰ってしまうと再び戻ってくることが難しいのだという……そしてなによりも彼女にとっての故郷はこの街なのだそうだ。だからこそここで暮らしていきたいと言い出したのである。

それを聞いた私たちはそれぞれ顔を見合わせると頷きあった後で彼女に言ったのである。「じゃあ、帰りましょう」と……

すると彼女は嬉しそうな表情を浮かべて大きく首を縦に振ったのだった。


「それにしても、ローザは本当に成長したな!あんなにも小さかったのに」

久しぶりの再会を果たしたアルヴィドにそう言われた私は、苦笑いするしかなかった。確かにあの頃に比べると背も伸びたし大人になった実感はあるけれどそれでもまだ子供扱いされるのには慣れておらず複雑な心境だったのだ............

「まあでも元気そうでよかったよ!ところで今はどこに住んでるんだ?」と聞かれたので正直に答えたところ驚かれてしまったがすぐに笑顔に戻ると今度は頭を撫で始めたのである。恥ずかしかったけれども同時に懐かしい気持ちが込み上げてきてついされるがままになっていたのだった。

「テオフラトゥス様、ご無事だったのですか!?」

と聞くと彼は笑顔で答えてくれた。「うむ、心配には及ばんよ」と言って胸を張った後、今度は私の方を見てきたのである。

「君たちも無事でよかった」と言われてしまい少し照れながらも感謝の言葉を述べたのだった……そしてその後はみんなで食事を楽しむことにしたのだがそこで私はふとあることを思い出したのである。

「そう言えば...........」と言いかけたところでアルヴィドが割り込んできてこう言ったのである。

「そうそう!さっき見たあの女の子って誰なんだい?」と聞かれたので素直に答えることにしたのだ。

と尋ねると彼は首を横に振って答えたのである。「いや、俺も初めて聞いた名前だよ」と言ってきたので少し驚いたがすぐに納得したのだった……というのも魔法を扱う者は皆、自分の名を隠すことが多いからだそうだ。

そのため私もまた同じだったというわけである..........まあでも私はまだ見習いだからそこまで気にする必要もないのかもしれないけどね。

それから食事を終えた私たちはそれぞれ自分の部屋に戻ったのだがそこではテオフラトゥス様から呼び出しを受けたので行ってみることにしたのだ。するとそこには既にアルヴィドも来ていたようで2人で待っていたのである。

一体どうしたのだろうと思っていると、なんと2人に魔法を教えてもらえるらしいので驚いたが同時に嬉しくもあったのだ……なぜなら昔からの友人に再び会えただけでなくこうして一緒にいられるということ自体が奇跡みたいなものなのだから。

早速、その日のうちに特訓が始まったのだが最初はなかなか上手くいかなかった.........というのもやはり私には魔法の才能が全くなかったようでいくら頑張っても全く成果が出ないばかりか逆にどんどん下手になっていく一方だったのだ。そんな私を見かねてかテオフラトゥス様がある時こんなことを言い出したのである。

「うーむ、剣術の方を磨いた方がいいのかもしれんな。才能があるみたいだしのう」

と……それを聞いて私は思わず固まってしまったが、すぐに気を取り直して反論しようとしたものの言葉が出てこなかった。というのも実際その通りだったからだ。

「確かにそうかもしれないわね..........」と言うとアルヴィドも納得したようで頷いていたのだった……そんな様子を眺めていたテオフラトゥス様は何やら考え込んでいる様子だったので心配になった私が声をかけようとしたその時だった!突然立ち上がってこう言ったのである。「よし決めたぞ!明日から剣の稽古を始めることにしよう!優秀な騎士団の元で頑張ろうぞ」と……それを聞いた私は思わず顔が引き攣ってしまったが、そんなことはお構いなしにどんどん話が進んでいくので結局断り切れずに行く羽目になってしまったのである。

こうして新たな修行が始まったのだがこれがまた想像以上に大変なもので何度挫折しかけたことかわからなかったほどだった..........しかしその度にテオフラトゥス様やアルヴィドから励まされながら頑張ることができたおかげで徐々にではあるが上達していくことができたのだった。そしてついには騎士団の中でも上位の実力を身につけるまでに至ったのだ!

「よくやったな!」と褒められながらも頭を撫で回された時には嬉しさのあまり泣いてしまったほどである...........そうして成長していくうちにいつしか私は強くなっていくことができたのであった。

「ローザ、ちょっと買い物に付き合ってくれないか?」

ある日突然アルヴィドに声をかけられた私は驚いたものの、断る理由もなかったので承諾することにしたのである。そうして街に出た私たちは色々な店を見て回った後でとある雑貨屋に立ち寄ることになったのだがそこで思わぬ出会いを果たすことになるとは思いもしなかった.........というのも、なんとそこに居たのがセイレンだったのである!彼女はこちらを見るなり固まってしまった様子だったので不思議に思っていると突然泣き出してしまったのだ。

「どうかしたんですか?」

心配になって尋ねると、彼女は泣きながらも答えてくれたのだ。どうやら最近ずっと元気がなかったらしくその原因というのが彼女の師匠である魔法師が原因だということがわかったのである..........なんでも魔法師がセイレンさんに戦いを強要しているらしいのだ。しかもそれがただの戦闘ではなく命をかけた勝負だというのだから驚きだった。

「そんなことが…かよわいレディにそんなことをするなんて、許せない」

と怒りを露わにする私だったがアルヴィドの方は冷静な様子で話を聞いていた後でこう言ったのである。「まあ、彼女なら大丈夫じゃないかな」と……なぜならば彼女は氷の属性を操る魔法使いであり、その実力はかなりのものだったからだ……そのため万が一負けることがあったとしても倒されることはないと判断したからこその発言だったらしいのだ。

それを聞いた私は納得すると同時に少し安心していたのだがそこでふとある疑問が浮かんだので思い切って聞いてみることにしたのである。それは何故セイレンさんがこのことを私に話してきたのだろうかということだったのだがそれについては彼女もよくわからないという答えしか返ってこなかったのである……どうやら彼女自身もなぜこのことを話したのか理解できていないらしく自分でも驚いているようだった。

「まあ、とりあえずこれで話は終わりだね!じゃあそろそろ私は帰るね!」とセイレンが立ち上がり、店を出ようとした時、突然アルヴィドが「ちょっと待って」と言ったかと思うとセイレンを呼び止めたのである。

「ねえ君、髪の毛に葉っぱが..........」と言いかけたところで彼女は慌てて自分の頭に手をやり確認し始めたのだがどうやら見つからなかったようで恥ずかしそうにしていた。その様子を見ていたアルヴィドは小さく笑うと「取ってあげる」と言いながら近づいていったのだ。そしてセイレンの後ろに回るとその肩に手を置きながら髪についた木の葉を取ってあげたのである。するとそれを見た私は思わずドキッとしてしまったのだが、それと同時に胸の奥底で何かがうごめくような感覚を覚えたのだった……それが一体何なのかはよく分からなかったのだが.........

その後、店を出た私はそのまま帰路につこうとしたのだが、アルヴィドに声をかけられた。

「ローザ、あそこの店に寄らないか?小さい頃、君は薔薇の髪飾りをしていただろう?見ていこう。」

「えっ?ああ、そうね。懐かしいわ」と言って店に入ってみると中には様々な種類の髪飾りや小物などがたくさん置かれていた。その中でも特に目を引いたのが薔薇の形の髪飾りだった。

深紅に染まったその髪飾りは、私に似合うか分からなかったが、思わず手に取った後でじっと眺めていると、横から覗き込んだアルヴィドが声をかけてきたのである。

「気に入ったかい?」

そう聞かれたので素直に頷くと彼は微笑みながら言ったのだ……「じゃあ買ってあげるよ」と言われた瞬間、私は驚いてしまったものの慌てて遠慮しようとしたのだが結局押し切られてしまったのである。そしてそのまま会計を済ませると私に手渡してくれたのだった。

「ありがとう……」と言って受け取ると、早速その場で身に着けてみたのだが思った以上によく似合っていたようで自分でも驚いてしまったほどだった……すると今度はアルヴィドから声をかけられて振り向くとそこには優しい笑みを浮かべた彼の顔があったのである。

「うん、やっぱり似合ってるよ」

そう言われた私は、思わず顔がにんまりとしてしまいそうになるほどの嬉しさを感じていたのであった。

「ローザは、何をつけたり着たりしても似合うなぁ」

それから店を出た私たちは再び宿屋に帰る道を歩いていたのだがその間もアルヴィドは何度も私のことを褒めてくれたのである。それがとても嬉しかった反面照れくさくもあったため上手く返事ができずにいたものの内心はとても幸せを感じていたのだった..........だが、それも長くは続かなかった。

何故なら突然、後ろから声をかけられたからである!振り返るとそこには見知らぬ男性が立っていたのだ。年齢は20代後半くらいだろうか?背が高く体格も良いことからおそらく力仕事などをしている人だろうということは推測できたがそれ以外の特徴については何もわからなかったため警戒していると彼は自己紹介を始めたのである。

「初めまして!僕の名前はバルトといいます!」と元気よく挨拶してくる彼に戸惑いながらも私も自己紹介をすることにしたのだ..........すると、それを聞いた彼は満面の笑みで頷いてくれたため少しだけホッとすることが出来たのだった。しかし次の瞬間、彼が発した言葉によって状況は一変することとなる...........なんと彼はセイレンの知り合いだと言うではないか!しかも話を聞く限りかなり親しい間柄のようだということはわかったものの一体どんな関係なのかまではわからなかったため困惑していると突然、セイレンが割り込んできたのである。

彼女は慌てた様子でバルトと名乗った男性の腕を掴むとそのまま引っ張っていってしまったのだ……その際にバルトが私の方を見ながら意味深な目配せをしてきたことで嫌な予感を覚えたのだが、結局それ以上は何も起こらなかったためにホッと胸を撫で下ろしたのだった。

その後、宿屋に帰った私たちは夕食を食べ終えるとすぐに眠りにつくことにしたのである。アルヴィドは朝早くから稽古をすると言っていたので既に隣の部屋に戻っており今頃はぐっすり眠っている頃だろうと思いながら私もベッドに横になると目を閉じたのだがなかなか寝付くことが出来なかったのである。

というのも頭の中ではずっとバルトという男の顔が浮かんでいたからであり、その度に何かを訴えかけようとしてくるような感覚に苛まれていたのだ。しかしそれが何なのかは判明できずにいるといつの間にか眠りに落ちていたのだった……翌朝、目が覚めると同時に昨日の出来事を思い出した私は慌ててセイレンの所へ向かったのだがそこには既に姿がなかったのだ……一体どうしたのだろうかと思っていると不意に背後から声をかけられたので振り返ってみるとそこにはアルヴィドが立っていたのである。

「おはよう!早いねローザ」

そう言いながら近づいてくる彼に対して挨拶を返すと共に何故ここにいるのかと尋ねると意外な答えが返ってきたのだ。なんと彼もまたセイレンに用事があるらしく、一緒に探していたのだというではないか..........!

それを聞いた私は驚きつつも、お互いの利害が一致したということで、共に探し出すことにしたのである。

…だがその一方で不安な気持ちもあったのだ。というのももしセイレンが見つかったらまた昨日のような展開になってしまうのではないかと思ったからである……そう思うと気が気ではなかったのだがそんなことを考えているうちにいつの間にか目的地に着いていたようだ。そこは街の外れにある小さな空き地だったのだが、そこに人影が見えたので近づいてみると案の定セイレンがいたのだった!しかも何故か泣いていたようで心配になった私が声をかけようとしたその時だった!突然バルトが現れたかと思うと彼女を優しく抱きしめたのである...........!

その光景を見た私は思わず固まってしまったものの、すぐに我に帰ると慌てて後ろを振り返ったのである。

するとそこには私と同じく唖然としたアルヴィドが立っており、目が合うと同時にお互い頷き合った後でそっとその場を離れることにしたのだった。

その後、私たちは無言のまましばらく歩き続けていたのだが不意にアルヴィドが口を開いたことで沈黙が破られることになったのである……一体どんなことを言うつもりなのかと思っていたら予想に反して出てきた言葉は意外なものだったため驚いた反面少しだけ安堵していたのも事実であった。

「ねえローザ、もし良かったら今度二人でまた出かけようよ。ほら、僕はおしゃれだから」と自信満々に彼は言うと微笑んだ後に手を振って去って行ったので私も手を振り返しながら見送ることにしたのだった.........そして、一人になった後もしばらくの間その場に立ち尽くしていたのだが次第に冷静になっていくうちに、だんだんと2人のことを思い出しては恥ずかしくなってきたため、急いでその場を後にしたのだった。

そして宿屋に戻った後、部屋で休んでいた時のこと……セイレンとバルトがどうなったのか気になりつつも聞くわけにもいかずモヤモヤしていた時のことだった!突然部屋の扉を叩く音が聞こえてきたので開けてみるとそこにはセイレンが立っていたのだ!

「あの、ローザさん.........少しお話いいですか?」

と言われてしまったので断ることもできずに部屋に招き入れることにしたのである。そしてテーブルを挟んで向かい合う形で座ると彼女は真剣な表情で語り始めたのだった……その内容というのが衝撃的なものであったために私はしばらく言葉を失ってしまったほどだったのだがそれでも何とか最後まで聞き終えた後でホッと胸を撫で下ろした後で改めてセイレンを見つめた後、静かに語りかけたのだった……

「初恋が実って良かったわね、2人とも末永くお幸せにね」と言いながら微笑むと、セイレンは涙ぐみながらうんうんと頷いていた。

そう、セイレンとバルトはお互いに初恋の相手だったそうだ。

気持ちを伝え合ったところ、私とアルヴィドに見られていたところを知って、恥ずかしくてその日は逃げてしまったらしい……。

それにしても突然現れたバルトだったが、2人が恋人同士になるなんて想像もできなかったけれど、よく考えてみたらお似合いかもしれないと思ったりもしたのだった。

本当に良かったねセイレン、幸せになってね! そんなことを考えているうちに自然と笑みが溢れてきてしまう私であった。

「ローザさん.........ありがとうございます」と泣きながら言うセイレンの姿を見ていたら私ももらい泣きしてしまいそうになったので慌てて涙を拭った後で優しく頭を撫でてあげたのである。

「あらあら、泣かないでセイレン」と言いながら優しく抱きしめてあげると安心したのかしばらくすると落ち着いてきたようだ。

そんな様子を見ながら微笑んでいた私だったがふとあることを思い出したので尋ねてみることにしたのだ。

それは何故この場所に来たかということである。すると彼女は恥ずかしそうにしながらも答えてくれたのだがその内容を聞いているうちに驚きのあまり絶句してしまったほどである........なんと、彼女もまた私とアルヴィドの関係について気になっていたというのだ!

「アルヴィドとは幼なじみなだけですよ、それに私には婚約者がいますし...........」

「えっ!?婚約者!?」

「はい、私の婚約者は……」

そこまで言いかけたところでセイレンが急に黙り込んでしまったため不思議に思って見つめていると彼女はハッとした表情になった後で慌てた様子で手を振り始めたのだ。どうやら何かを思い出したらしい.........一体どうしたのだろうかと思っていると、突然立ち上がり部屋から出て行ってしまったのである!私は呆然としながらその様子を眺めていたのだが、しばらくすると再び戻ってきた彼女の手には、何かが握られていたのだった。

それは小さな箱であり中にはネックレスが入っていた。

「これは..........?」

そう尋ねるとセイレンは微笑みながら言ったのである。

「このネックレス、実はお揃いなんですよ」と.......その言葉に驚いたもののよく見てみると確かにデザインが同じであることが分かったため納得していると、さらに彼女は続けたのだ。

「ローザさんにプレゼントしようと思っていたんです!受け取ってください!」と言われたので、嬉しく思い受け取ることにした。

「ありがとうセイレン。大切にするわね」とお礼を言うと、彼女は嬉しそうな表情を浮かべながら微笑んでくれたため私もつられて笑顔になってしまったのだった……そうしてしばらくの間、雑談を楽しんだ後で私は自分の部屋に戻ったのだがその際にふと気になったことがあったので尋ねてみることにしたのだ。それはどうしてお揃いの物をプレゼントしてくれたのかということである!するとセイレンは少し照れ臭そうにしながらも理由を語ってくれたのである……!どうやら私がアルヴィドから髪飾りを買ってもらったことが羨ましかったらしく自分も何かプレゼントしたいと思っていた時にこのネックレスを見つけ購入を決めたということらしい..........!

なるほどそういうことだったのかと思いながらも納得しているとセイレンはさらに話を続けたのである……!「お揃いのものを付けることで、より一層絆を深めたいという思いもあったんです」と言いながら悪戯っぽく微笑む彼女を見ていると自然と笑みが溢れてくるのだった..........。

それからというもの、私とセイレンは頻繁に会うようになり一緒に出かける機会も増えていったため必然的にアルヴィドとも顔を合わせる機会が増えていったのだ。

そんなある日のこと、いつものように3人で食事をしていた時に突然セイレンがこんなことを言い出したのである。

「実は、バルトからプロポーズされまして..........」

その言葉を聞いた瞬間、私は驚きのあまり固まってしまったもののアルヴィドは特に動揺した様子も見せずに平然としていたのだった

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隣国の王子様に求愛されまして〜ほのぼのライフだと思っていましたが〜 スカイ @sky_8u

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