窓の外
夕日ゆうや
大好きなあの人
わたしは
愛していると言ってもいい。
最愛の夫だ。
わたしが朝起きると、いつも彼が朝食を用意してくれる。
『おはよう。
『いつもありがとう』
『暇だからね』
苦笑する彼の顔は驚くほど、愛らしい。
可愛いも格好いいもある信長くん。
彼はわたしのことを想っていてくれる。
優しい彼が大好きだ。
彼のようなイケメンはそうざらにいない。
結婚して二年目。
なんの喧嘩もなく、ただただぼんやりとした日常を送っている。
どちらかが我慢するような夫婦関係ではないと思う。
信長くんはわたしの誕生日にケーキを買ってくれたり、普通の家族だったと思う。
少しばかり信長くんの優しさが溢れている新婚生活だった。
優しい彼が好き。
落ち着いた雰囲気の彼が好き。
大好き。
そんな彼が死んだ。
最後に「いってらっしゃい」と挨拶をしたのを今でも覚えている。
転がった空のカップ麺。散らかった衣類。ペットボトル。
わたしは何をしているのだろう。
母が言うにはセルフネグレクトらしい。
窓の外を見つめる。
夕闇に染まっていくなか、そこに信長くんが見えた。
ぼんやりと白いもやをまとっている。
もっと近くで見たい。
わたしは窓を開けて飛び出す。
地上から二十五階。高さおおよそ百メートル。
「あ」
ベランダはない。
わたしは信長くんの亡霊を見て、自由落下する。
「きゃ――――――――っ!!」
悲鳴が聞こえた。
窓の外 夕日ゆうや @PT03wing
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