もふもこ

藤泉都理

もふもこ




 いつも、モフらせてもらっているこの御恩。

 これを機に返させていただきやす。


 一枚目、あったかインナー。

 二枚目、長シャツ。

 三枚目、タートルネックセーター。

 四枚目、袖なしダウンジャケット。

 五枚目、はんてん。

 裏毛スウェットパンツ二枚。

 足首ウォーマーに、五本指ソックスと毛糸ソックスの靴下二枚。

 さらに、首にマフラーを巻いて、さらにさらに、随所にホッカイロを貼れば、あったかもこもこ人間の完成である。




「どうぞ」

「いや。どうぞ。と言われても。え?なに?」


 両腕を広げる私は不敵な笑みを浮かべた。


「ふっふっふっ。いつもは毛がもふもふの君は、今、五年に一度の毛の生え変わり時期だ。寒かろうにて。だから。もこもこの私を抱きしめて温まりたまえ。いつも、モフらせてもらっている恩返しだ」

「いやいい。俺もおまえに匹敵するくらいに着込んでるから寒くねえし」

「まあまあ。遠慮するなよ」

「いやしてねえし。それよりおまえ今日も鍋だけど肉ばっかりじゃなくて野菜も食えよ」

「それより、もーふーれーよー」

「うざっ」

「モフることで得られる癒しを感じてほしいんだよ~」

「うざっ。まじうざっ。あっ。さてはおまえ、夕飯前にもう酒飲んで酔ってんだろ。もう寝ろ」

「もーふーれーよー」

「おまえをモフるくらいなら、布団をモフるわ」

「無生物だろ。生物のもふっぷりを堪能しろよ~」

「うげっ。おまえ。酒飲んでねえな」

「飲んでねえわ。一度も飲んでるなんて言ってねえわ」

「しらふでこの絡みかよ」

「ほれほれ」

「あ~~~わかったわかった」

「よしよし。っぐ」

「よしよし。お休みなさいね。夕飯の支度が終わったら起こしてあげるからね」


 獣人は素早くツボを押して眠らせた同居人を姫抱っこして、ソファへと寝かせて、鍋の準備に取り掛かったのであった。


「あ~~~。でも起こしたらまた言ってくるんだろうな~~~めんどくせえ~~~な~~~」


 いつも好き勝手にモフらせているのだから、こっちの言い分も聞き届けてほしいものだ。

 こちとら、モフる気皆無なのですよ。











(2024.1.14)



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もふもこ 藤泉都理 @fujitori

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