第2話
気がつくと、牢屋のベッドでただ一人仰向けに寝っ転がっていた。
「僕は生きているのか」
あの禁術を使って何で生きているのかが分からなかった。
「起きたな!」
「僕は死んでいないのか」
「感謝しろ。騎士団長殿がお前を生かしたのだ。お前まだ子供だろ。何歳だ」
「15歳」
「騎士団長殿がお前を殺すのは忍びないってな。何でも騎士団長殿の孫とお前が重なってしまって殺せなかったらしい。感謝しろよ」
「騎士団長は生きているのか?」
「生きているよ。お前ごときにやられるわけあるか!」
そのままランクイッドは捕虜として牢屋につながれていたが、やがて靴磨きとして仕事を与えられた。ただし剣を常に首筋に向けられていた。そしてアムス帝国の兵を殺した罪で背中に奴隷の焼き印を押されたが逆にそれぐらいで済んだ。それどころかいつの間にか牢屋に勉強しろと置き手紙とともに大量の本が置かれていたりもした。昼間は靴磨きの仕事を行い、夜は文学に経済学に法学に医学とむさぼるように本を読み勉強を続けた。
そしてついに終戦を迎えた。ルートム国が負けたのだと獄卒から聞かされた。ランクイッドは釈放された。ランクイッドはルートム国に帰った。その後ランクイッドを含む生き残った者たちはルートム国の復興に力を注ぐことになった。ルートム国はアムス帝国に対し膨大な賠償金を支払うことと一部の領土を割譲した。
ランクイッドは、牢獄につながれていたときに覚えた言葉で外交官になり母国の復興に力を注いだ。合間合間に魔法を学生に教えたりもした。ランクイッドは禁術を使った結果、魔法を使う流れみたいなものが血管と繋がり常に限界以上の魔法を使えるようになった。ただし糖尿病にもなり身体ががたがたになった。
数十年が過ぎ、ランクイッドも中年に差し掛かったころであり忙しいさなか、ふと風の便りにアムス帝国の騎士団長アレンが老衰のために亡くなったと聞いた。
「あのアレン殿が亡くなられた」
秘書を呼び、真偽を確かめたところ、確かに亡くなられたとの事であった。
心臓の動悸が速くなる。速くなる。感情がぐちゃぐちゃになる。涙が一筋、つうっ、と流れたと思うと次々に落ちていく。
「アレン殿、ありがとうございました。あなたがいなかったら私は生きていなかった。ご冥福をお祈りします」
そのままランクイッドは泣き崩れた。
了
ルートム国記―ランクイッド備忘録― 澄ノ字 蒼 @kotatumikan9853
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