2月14日のモノ語り 葵編
永盛愛美
第1話
むかしむかしとある町に、同い年のいとこどうしの男の子が近くに住んでいました。彼らはとても仲が良く、何をするにも一緒でありました。
これは、そんな彼らが小学校高学年の頃のお話です。
同い年の背の高いいとこは、すでに去年、小四の時のバレンタインデーにチョコレートをもらっていました。ですが、今年のバレンタインデーには誰からも受け取らずに、全て返したと聞きました。それを聞いて、彼はもったいない!と思いました。
兄や同い年のいとこの兄ももらっていましたが、自分はもらった事がありません。いいなあ。僕もチョコレートが食べたいなあ。
と呟くと、昨年はお母さんと妹が選んだチョコレートケーキを買って来てくれて、家族みんなで食べました。今年はお母さんと妹が作ってくれたチョコレートケーキを食べる事が出来ました。
彼にとって、バレンタインデーとは家族みんなでチョコレートケーキを食べる日になりました。クリスマスや誕生日にケーキを食べる事と同じです。
ところが、同級生たちが、最近になって不穏な動きを見せ始めました。彼は、校舎内で女の子たちが集まって、内緒話をしているところを偶然通りかかって、聞いてしまったのです。ちょうどホワイトデー当日の事でした。
なんということでしょう! 彼は、女の子たちが話している内緒話に参加したいと思ってしまいました。とても楽しそうです。その話の中で、とある男の子にチョコレートをプレゼントして告白した女の子がいました。が、その男の子には既に好きな女の子がいるから、と、断られてしまったと言うのです。
内緒話を立ち聞きしてしまった彼は、何故かその話を聞いて動揺してしまいました。その数日後には、その男の子の夢を見てしまったのです。
それからというもの,彼はその男の子の事が気になってしまって仕方ありません。うっかり傍を通ろうものなら、心臓がバクバク言って、見ないようにして歩かなくてはなりません。
しかし、遠くから見つめたいと思っているのです。この自分の気持ちが「恋」だと気付いたのは、クラスメイトの初恋の告白を聞いた時でありました。
友達は、彼と全く同じである症状を述べました。それから、これが初恋であると宣言したのです。
もう、納得するしかありません。初恋を意識した彼は、悩みに悩んで、世界で一番悩んでいる小学生は、自分ではあるまいか、ギネスブックに登録するには、どうやって証明したらいいのか? と、これまた真剣に悩みました。はっきり言って幸せな子でした。(アホな子とも言いますが)
そして更に数年後、彼は同い年の背の高いいとこが、同じ仲間だったことを知りました。それからは、黒歴史を共有し、苦労を共にし、助け合い、励まし合って、生きる道を選びました。
二十数年後には、お互いの良き伴侶に巡り会えるかもしれません。
たぶん将来的にはめでたし、めでたし。
2月14日のモノ語り 葵編 永盛愛美 @manami27100594
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます