第2話 ただのバカと暑いのに学ランを着るアホ

夏休み明けの、月曜日。

暦では、秋の頃合。先日まで台風が日本列島を襲っていたせいか、気温も少し落ち着き始めている。

それでも日中に太陽の下を歩けば、汗がベタベタとこべりつく。

そんな季節の変わり目。

駅のホームは、通勤通学の人々で騒がしさを取り戻していた。


「一番線に電車が参ります。黄色い線の、、、」


電車のドアが開き、既にぎゅうぎゅうな車内に人が流れ込む。


「ドアが閉まります」


二回目のアナウンスが流れドアが閉まる。

車内は足のふみまもない。


ギーギー

列車は、鈍い音を出しながら進む。


次の駅までは、約10分。

出発して3分ほど経った頃、

そんな車内では

20代の男が目の前の女子高生を観察していた。

長く伸びた黒髪、小柄で小さな体、まだ薄手の制服。

全てが、彼の趣味に合っていたのか息が少し早くなる。


満員電車、周りの乗客を目の端で確認する。


誰も見ていない。

彼の右手が、彼女の髪に伸びる。


ビクッと彼女の肩が震える。

青年は、髪の匂いを嗅ぎながら状況をたのしむ。


少女が声を上げないことを良いことに、

青年の手が下へと下へと、、、




次の駅まであと5分




無情にも電車は進む、、、




『ビィ!ビビビビビっ鼻ビビビビビビッビビビビび!!!!!!ヂヂヂィィクヂヂヂ』

甲高いベルの音が鳴り響く。


『緊急用ボタンが押されたためこの電車は次の駅で緊急停車致します。』

今日、三回目のアナウンス。

いつもと違うアナウンスに乗客の反応は様々だ


乗り換えの電車を調べる人。

気づかず音楽を聴いてる人。

電車の遅れに不快感を感じる人。

その中に青年の姿もあった。


少しして、電車のドアが開く。


青年は電車から降りない。

せっかくの獲物だ。

まだ、楽しむ為、止めていた手を動かし始める。


ガシッという効果音が鳴るくらいの勢いでいきなり彼の手が掴まれる

「お兄さん、降りますよ。」

「え?」


男は頭の中が真っ白になり、バレた事による焦りか顔を引き攣らせた。

バランスを崩しながら車内からでる。


「ちょちょっと!」

男が掴まれていた右腕を力ずくで振り解き手を掴んでいた相手を睨む。

ここで青年が少し目を丸くした。

目の前に向けた目線は、彼の予想よりもはるか上を向けなければならなかったからだ。


青年も172センチと小さくはないが。頭ひとつ分ほど、目の前に立つ少年の方が大きかった。


身長もそうだが、青年が目を丸くした大きな理由は別にもあった。

目の前の、学生服いわゆる【学ラン】を着た少年の顔があまりにも整っていたからだ。


夏の暑さがまだ残るこの季節に学ラン?とは思ったが、そんな疑問を忘れさせるような不思議な魅力を纏っている。

少し上の高さから、見下ろされる感覚が青年の癖に少し響いた。


だが、しかしだ。

180cm近くあるだろう身長とその顔面偏差の高さにも驚いたが、結局は、こんな状況でそんな事を考えてる自分に1番驚いていた。


頬を染め、少年に見惚れていると。

少年の柔らかそうな唇が近づいてくる。


目をつぶる青年

「!!」

「ねぇ、おにぃさん」


片目を開ける青年

「、、、はぃ」

「警察いこっか」


「はい」


強烈な愛の告白だった。


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瑠璃色の世界でもう一度 ryuki @moriogai

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