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私には「れな」という仮名の友達がいた。年は恐らく、私の一つ下である。
何故、こんなふらふらとした物言いしか出来ないのかと言うと、私も彼女のことを何も知らないからである。彼”女”、なのだろうか。姿すら見たことがない。とあるサイトで、同じストリーマーの視聴者であったことから交流が出来た、所謂「ネッ友」である。
若さというのは難儀なもので、一つの共通点を有するだけで相手の人間性までをも信じてしまう。この「若さ」を引きずる大人がリテラシーの抜けた愚者として取り扱われるのが現代日本だ。実際、不安定な情報に踊らされすぎているように感じる。一枚の自撮りに寄ってたかって性の痕跡を残そうとする様は、少ない餌に群がる鯉のようで大いに滑稽だ。顔も見えない誰かの、信憑性の欠片もない、たった一枚の写真だけで、何故あそこまで出来るのか理解が追いつかない。場合によっては自らの”あられもない姿”まで晒しうるのだとか……
れなはまさに、其の様な人間を釣る側の人間だった。しかし、業者でもボットでもない。男諸君に都合良く書かれすぎたプロフィールもあながち間違えではなかったようだが、劣情を利用し心内で嘲ってもいた。要するに、彼女は其れを衣食住の当にしていた。この話含め、順を追って詳しく説明しようと思う。
……かくいう私も、半分は其れに釣られた人間と変わらない。なにせ、「同じ配信者を好きな視聴者」というだけで様々を信用し、個人情報の流出に近しいことを行っていた。勿論、彼女が悪人であれば利用されかねない代物である。結果として違ったわけだが、私は嘲る側の人間には成れないらしかった。
彼女へ何を晒していたのかと言えば、LINEのQRコード及びID、学生証に使用した顔写真、様々なSNSのアカウント、住所、進学先、本名、電話番号……細かいものまで挙げればきりがない。高校生活を省みるに、晒した数々が広まっている様子はないようなので、どうやら悪用はされていないらしいという判断である。
「友なのだから、渡した情報と引き換えに、向こうからも何かしらを渡されているはずだ」と思う人が一定数いるだろうと見受けられる。鋭い。そして恐らく、私でなければそれは正しい。
私が情報と引き換えに得ていたものは、れな自身からの信頼であった。れなの性別や所在、容姿などは、当時の私からすれば関係のないことだったのだ。彼女のことを狂おしいほどに好いていただとか、一夜の過ちを望んでいただとか、そういうわけでは無い(冷静になり思い返すと、そういうわけでもあったかもしれない)。
……では、何と比べて関係ないとしているのか。
聞く話によれば、彼女は二回の自殺未遂を犯していた。
そして、三度目の自殺を計画している。
私は其れを止めるのに必死だった……
不思議な話だ。何故、顔も知らない赤の他人牴牾にそこまでの感情を抱けていたのか、今の私にはわからない。無論、自殺未遂が本当なのかもわからない。わからないのだ。
しかし、それまで温室で育て上げられてきた私にとって、それが大変な衝撃であることに変わりはなく、どうにかして彼女を救い出さなければならないと考えていた。彼女を取り囲む環境や、そのような思想に至ってしまっても救うことをしない家庭、彼女自身の軋み……限られたようで尽きることのない悩みなどから。
これらに対し、無責任な正義感を存分に振るおうとした。
……これが、私が懺悔すべき事のうちの一つ目である。
売春 福助 @Fuku5uke
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