第5話

 そこへ、俺の上司が戻ってくる。

「できたか?」

「入らないもんで、電源」

 すると上司は、キーボードの端にある、二重丸に棒が刺さったような印を指で押した。

 たちまちのうちに、真っ青な画面にたくさんのアイコンが浮かぶ。

「ありがとうございます」

 俺は素直に頭を下げた。

 あの子供たちが目の前にいたら、つまらない意地を張ってできなかっただろう。

 そこで、ふと考えた。

 もし、あれが「何でもできる」と思っていた頃の俺だったとするなら……。

 そう思うだけで、生まれてこの方、背負い続けてきた肩の荷が下りたような気がした。

 

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昔の俺が見つめてる 兵藤晴佳 @hyoudo

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