人間の自由意志による選択限界と、個の孤独

人間の下す個別的な選択・意志決定を、「ファジー回路」という自己選択・決定権の機能を搭載した人工知能が同様に下せるようになった近未来を舞台にした作品である。身体をサイボーグ化した人間と、クローン臓器スペアを培養し生体部品を内蔵したアンドロイド。技術的発展により両者の距離が限りなく接近し続け、区別困難な「臨界点」に達した時、地上では一体何が起こるのか。アシモフやレムと同一線上にある、哲学テーマを扱った純SF的作品だと感じた。機械が人間の限界をも体現した完璧な「個」になり果てた時、スタンドアロンたちは「彼らがそうしてきたように どこか懐かしさを感じながら」争い合うという「選択」に至る。挟まれる少女と「海」の描写が印象的だ。
少し出だしが硬いが、全体に漂う終末の雰囲気が美しい。内容に比して短い作品なので是非読んでほしい。