卓抜した世界観と文体のSF小説

あらすじを読んで面白そうだな、と読み始めましたが、文章も内容も素晴らしかったです。火星に入植後の新人類的な、合理的なものの考え方をする女の子の視点がクール。煩雑になりがちな専門用語も読みやすく、文体の巧みさも相まって、するすると頭に入ってきます。練りこまれているけれど説明的ではない、世界観の演出が卓抜していると感じました。おばあちゃんの素朴な方言と、近未来的な用語のミスマッチがとても新鮮で読み心地が良かったです。ラストシーンは一気に文学的な雰囲気を帯び、美しい。読む愉しさに溢れる魅惑的な作品でした。

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火星の桜