第4話 復讐と新しい命

「な、なんだここは? 痛っ。」


「あんま、ジタバタせんほうがええで。メイデンさんの中は棘棘や。

 下手に動くと刺さってめっちゃ痛いんや。ほら、こんな風にな。」


ワイはレクチャーするように血を流す。


「ほんで、あんた人間終わっとるな。ほんま最悪やで。蟲地獄や。」


「だからこれは何なんだ!」


「ワイのスキル『閻魔』は相手の業の深さに見合った地獄を与える。

 そんで、残念なことにワイも一緒にその業を背負わされる。

 ちなみに、そこの壁見てみ、真っ黒やろ?」


「だから、何だというんだ!」


「よう見てみ。動いとるんや。」


「ひ、ひいいい!」


「そう。ここは虫さんの世界や。

 蟻やムカデ、ヒルにゴキブリなど、ぎょうさんおるで。

 まぁ、多少毒はあるが、ちょっと痺れる程度で済む。

 こいつらにワイらはちょっとずつ喰われる。

 痺れで痛みもよくわからんくなるから、あんま痛あない。

 ちなみに虫さんは食ってもええで。痺れるがええタンパク源やで。」


「い、嫌だあああああ!」


「ほんで、どっちかが死ぬまでお互い外に出られへん。

 要は、あんたとワイの我慢比べってわけや。」


「それなら、お前が先に死ね! 俺様は貴族だぞ!」


「それがなぁ。残念ながら叶わんのんや。」


「ワイは前世でえらい殺され方をしてもうてな。

 しかもワイ弁護士やったんやが弁護した相手にやぞ。笑えるやろ。

 そいつはあんたみたいな快楽型の連続殺人犯や。

 自慢やないが無罪請負人と呼ばれとったワイでも、

 そいつを無罪にすることはできんかった。

 ワイ、自身がそいつにはある程度罰を受けて貰わんとあかんと思ってしまってな。

 んで、ある日そいつにワイは殺された。

 しかも目の前で大事な家族も陵辱の上、殺されてやで。」


「とんだ間抜けだな。だから、どうした。」


「この世界では死ぬ間際のダメージがそのまま耐性となるらしいんやわ。

 そんで、ワイの受けた拷問ってのが神様すら同情してくれる程のやつでな。

 人類史上最悪の拷問って言われたわ。」


「だから、どういうことだ!」


「すまんな。遠回しに言ってもうたわ。

 要するに、ワイはほぼ不死身や。」


「な、何!? ゆ、許してくれ。金ならいくらでも詰む。」


「早ない? まだ、1ミリも喰われとらんで。」


「俺様が許せと言ってるんだ!」


「分っとらんな。あんたこの前、人殺したやろ?

 殺された人たちや家族のことをどう思っとるんや?」


「下民の命どうだっていいだろ! 俺達貴族がいての下民だ。」


「あんた。頭いかれとるな。

 そんで、勢い余って牛を使った拷問までやっちゃったわけか?」


「はぁ。あの家族の件か。あんな家畜がどうした。

 しかも、あれに関しては家畜が勝手に裂き殺したんだろ。

 俺のせいじゃない!」


「じゃあ、ちょっとばかし反論させてもらうわ。

 さっき言った通り、あんたも爵位を剥奪されて、ただの下民や。嘘やない。

 その理屈やとあんたも殺されても文句ない立場やな。

 そんで、これは虫さんが勝手にやることや。ワイのせいやない。

 要するに、この世の中自業自得っちゅうわけや。

 仕方ないから、一緒にワイがその業を背負ってやるんや。感謝せえよ。」


「た、助けてくれ! ママァァァァァァァァ!」


「まぁ、ゆっくり地獄を楽しもうや。」



―――――

―――


「ヤマちゃーん。おかえりー! 遅かったねー。」


「ただいま。意外と生命力があってなぁ。思ったより長くかかってもうたわ。」


「ていうか、臭ーい!」


「そうやな。早よ帰って風呂にでもつからんとな。」


「あたちも一緒に入っていーい?」


「あぁ、構わんで。一仕事終えたしな。ただ、今日は首だけで勘弁してや。」


「やったー♪」



―――――

―――


「ヤマー。やっと帰って来たか! 1ヶ月も休むなんて風邪拗らせすぎだぞ。」


「ギルド長。病人上がりにきついこと言わんといてや。また病むで。」


「あぁ、体力つけるために今晩は俺が飯を奢ってやろう。

 先日、ワイバーンを討伐してな。お前の予算案のお陰で懐が温まったところだ。」


「おおきに。」



「あと、ギルドとは全く関係ない話だがな、

 ドラヴェニア家の一族郎党、逮捕されたらしいな。

 そこの次男坊が目を覆うばかりの仏となって見つかったらしい。」


「あぁ。知っとる。」


「あと、これもギルドとは全く関係ない話だが、

 この前殺しの依頼に来た火傷の嬢ちゃんが、何故かお礼を言いに来たみたいだ。」


「そうなんか? なんでやろな?」


「火傷の治療に回復術師を紹介してやると言ったんだが、

 これは自分の業として残しておくって言っていた。」


「そっか。」


「それと、お腹には2つの命が宿っていることがわかって、

 頑張って育てますとのことだ。」


「ギルド長。今日はステーキが食べたいわ。」


「あぁ、たらふく喰わせてやる。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

元無罪請負人のワイやが、転生して地獄の執行人となる 雨井 トリカブト @AigameHem

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ