ch.4 二次創作小説からふたたび
そんなこんなで子育て期間中(といってもまだ子育てが終了したわけじゃないが)、執筆から遠ざかり、私はもう二度と書くことはないのだろうと思っていた。
一度だけ子供を寝かしつけたあとに、書いたことがあった。
明け方近くまで書いたが、書き終えることはできなかった。
そこで私は早々に諦めた。
もう書けると思えなかった。
そんな時間も、気力も、体力もなかった。一時は限界に近いくらい、追い詰められた。
創作にかける情熱はその程度だったのかと、我ながら情けなかった。
自分に失望した。
すっかり書くことから遠ざかって、十年以上が過ぎた。
きっかけは『鬼滅の刃』である。
旦那が買ってきたのを、子供たちが読んでハマったのだ。アニメの放映も始まっていた。
私は当初、まったく興味がなかった。
そもそも私の漫画道(読者)は、『なかよし』と『りぼん』から始まっているので、基本的に少年誌の漫画を読むこと自体が少なかった。
子供が机の上に放り出していった『鬼滅の刃』の6巻だったか、5巻だったかを、なんとなしに読んでみたら…………ハマった。
アマプラで配信されていたアニメの全話を見て、その年のクリスマスには子供たちへのプレゼントとして(嘘つけ)、すでに買っていた分を除いた、すべての単行本を大人買いした。(このことはいまだに子供らにいじられる)
もうその頃にはすっかりスマホが当たり前のネット成熟期。何かを調べるのにネットを使うのは常識であった。
『鬼滅の刃』関連の情報はあふれすぎるくらいに溢れていた。その中で私はpixiv(ピクシブ)というサイトの存在を知り、そこで様々な人の書かれた『鬼滅の刃の二次創作』に接するようになった。
今更であるが、私はこのとき初めて『二次創作』なる言葉を知った。
それまでにも『三国志』や『十二国記』の同人誌を買い、古くは『
子供の頃から私は空想好きだったと書いたが、それこそ読んでいる小説の(世界の)中にもぐりこんで、また別のサイドストーリーを想像するくらい、楽しいことはなかった。
それはずーっと大人になるまでも、なってからもやっていることで、呼吸するように自然なことだった。
だから、盲点だった。
その空想を書いてもいい、ということが。
はい。ここまで来たらもうわかりますよね。三回目ですもんね。はい、どーぞ。
『あれ? 私、書けるんじゃね?』
ということで、書き始めてみました。
『鬼滅の刃』の二次創作。
無知なまま書き始めたので、正直、二次創作界隈の流行やら常識やらはまったくわかっていない。ただ自分の空想を書き連ねるだけ。今も独特の二次創作用語が理解できなかったりするたびに、ピクシブ百科事典のお世話になっている。
空想を書き進めるだけだったのに、気がつくと物語が動きに動きまくって、すっかり長編になってしまった。よく登場人物が勝手に動き出したとか言うが、まさしくそんな現象が起きていた。
前の小説のときにはなかったことで、新鮮だった。
『所詮はただの二次創作で、所詮はただの妄想』という、ある意味、力の抜けた状態で書いたのが良かったのだろうか。
これは現在書いている『昏の皇子』についてもそうで、以前は小説を書くにあたって、妙に肩肘張ったところがあったのだが、今はただただ『書きたい』という気持ちに従順に、ただ『書く』という作業を楽しんでいる。ともすれば、最初に赤川次郎を真似て書き始めた頃のように。
久しぶりに戻ってきた創作界隈の事情は、すっかり昔と様変わりしていた。
何より投稿のためのプラットフォームの多様さ。
昔、ホームページ作ってコソコソと書いていた頃とは比べものにならない書き手の多さ。
もうこんなに多かったら、そりゃ埋没するよ。
まして、テンプレ? なんじゃ、そりゃ。編集者がラクして売るための装置なのか、盲目なる書き手を作るための装置なのか、よくわからんけども。
すみません。
私はもう書きたいものを書きます。
この十年近く、書くことができなかったので、ようやく書けるようになった今は、もう自分の好きなように書きたいんです。
……というのは、負け犬の遠吠えで。
実際は私もテンプレ小説とか漫画、好きなのだ。悪役令嬢ものとか、結構読んでる。
でも書けない。
書けなかった。
書こうとしたら、今書いてる小説になってしまった。……
うん、わかった。さすがに気付くよ。
才能がないんだよ。可哀相にね。
でも、いいんです。
才能なくても書くから。
好きだから、書くから。
もうこうなったら、それだけの動力で押し通します。
こちとら石の上に三年どころかウン十年だ。
好きこそものの上手なれ……というより、下手の横好き。
わかってるさ。わかってますよ、身に沁みて。
それでも。
飽き性だと親から呆れられてきた私の唯一続けてきたことだ。
しばしば放り出したり、ときどき逃げたり、たまに捨てたり、これまでと思って封印したり……色々してきたけども。
気がつきゃ、キーボード打ってる。
脳内の空想を『物語』にして綴ってる。
たぶん、もう書かずにはいられない。
どうやら、そういう体になってしまったようだ。
【終】
モノ書くカラダ 水奈川葵 @AoiMinakawa729
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