初詣とおみくじ
大田康湖
初詣とおみくじ
あたしは友達の
「ねえ
星未は正面の本堂より脇のお守り売り場が気になるらしい。
「来年は大学受験だし学業成就かな、でも恋愛成就も気になるし」
まくしたてる星未の脇で、あたしは財布から五円玉を出していた。あたしも星未も、去年のクリスマスは相手にドタキャンされて最悪の夜を過ごした。星未はともかく、あたしはしばらく恋愛する気になれない。
のろのろと参拝の列が進み、ようやくあたしたちの番が回ってきた。賽銭箱に五円玉を入れようと右手を上げたとき、突然右隣の男が振り上げた左腕が当たった。あたしの手の中の五円玉が舞い上がり、左前の茶色いダッフルコートの青年の頭に当たって賽銭箱の中に飛び込む。
振り返ったダッフルコートの青年の顔を見て、あたしは驚いた。中学校の同級生だった
「あ、
元村はあたしを見て驚いたように言った。
「お前、クリスマスに渋谷でケーキ買わなかったか」
「その話、もうちょっと詳しく聞かせて」
星未が話に割り込んできた。
おみくじを引きながら、あたしと星未は元村の話を聞いた。
「バイトしてる渋谷のコンビニの店頭でクリスマスケーキを売ってたら、松永が男と手を繋いで歩いてるのを見てさ。そしたら一時間くらいして、松永が一人でうなだれて道玄坂を下りてきて、突然ケーキをホールで買ってったから驚いたんだよ」
「まさか元村だったなんて。サンタの髭で口が隠れてたから分からなかったよ」
「松永は俺をほくろでしか覚えてなかったのか」
「そんなことはないけど」
あたしはおみくじを開きながら元村に答えた。星未が補足する。
「ちなみにケーキは私と夏夜でちゃんと食べたから」
「やっぱり女はケーキが好物なんだな。今日はこれからどうするんだ」
元村の問いに答える前に、あたしは開いたおみくじを見つめる。「末吉」と書かれたおみくじの「恋愛」の欄にはこう書かれていた。
『古い恋を引きずるより、新たな相手を見つけましょう』
あたしはおみくじを神社の縄に結ぶと、二人に呼びかけた。
「みんなでファミレスでケーキでも食べない?」
終わり
初詣とおみくじ 大田康湖 @ootayasuko
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