続・ラノベ好きの母に作品をブクマされて読まれています
加藤伊織
「私をネタにするな!」
前作「ラノベ好きの母に作品をブクマされて読まれています」
https://kakuyomu.jp/works/16816452220710326367 で、私の母が当たり前のように私の小説の感想を食事中に言ってきたりする話を書かせていただいた。
それから2年半――加藤家の状況は少し変わった。
娘も、私の小説を読むようになったのである……。
切っ掛けは「GO! サイバーガード委員会」という小説を、カクヨム経由で角川つばさ文庫の賞に応募しようとしたことだった。
当時4年生だった娘は私の想定読者層に合致していたので、「漢字とか、表現とかでわからないところがあったら教えて欲しい」と娘に下読みをしてもらったのだ。
それまで娘はあまり活字を読む子ではなく、「マンガでいいから読め!」と私の愛蔵書を押しつけるくらいだった。
小学校の図書室でたまに本を借りてきて読んではいるが、「読書は心の免疫」と思っている私からすると、もっともっと読んで欲しかった。
娘はサクサクと私の小説を読み、特にわからないところはないと言い、「続き書かないの」という催促が始まった。この小説は現在3話で止まっているのだ。
ラノベ好きの母、でも少し書いたが、娘は私の小説の中で一部キャラのモデルになっている。外見だけは私に似た娘だが、ものの考え方などが全く違いすぎて「ほほぅ?」と感心してしまう。だからこそ、キャラクターを作る際にモデルになるのだ。
現在だと、「【柴犬?】の無双から始まる、冒険者科女子高生の日常はかなりおかしいらしい。」の主人公・柚香のモデルが娘である。体力お化けとか小6から動画配信とか、そういう辺りが。娘課金はスイミングぐらいしかされていないが。
娘は私の小説の中でも、一人称のコメディ・ギャグしか読まないが、物凄く熱心な読者になった。どのくらい熱心かというと、学校の先生などに私の小説を宣伝して回っているくらいだ。彼女が一番好きなのは、タイトルが長いので割愛するが通称「椅子召喚」で、これはこどもが読んでも平気な小説だとは思うが、それ故にクラスで授業中に娘が紹介したらしい。
やめてんか。
ママ、その前年にPTA役員やってたんや……。学校に「勤務先かよ」ってくらい行ってたんだよ……。PTA会議室にある机と椅子が小さいなあと思って、なんかそれが発想になって書いた小説なんだよ……。サイバーガード委員会も、PC導入ネタから思いついたんだよ……。
まあ、こどもから見て「親のやっていることを恥ずかしくて言えない」よりは、「人にお勧めできる」のはいいことなのだろう。
私が「ぐえっ」と思うだけで。
そして娘は私のiPadでカクヨムや小説家になろうを開き、私が知らないうちにいろいろな小説を読み始めた。驚いたのは、同じ小説を読んでいたり、「え、この小説600話以上あるけどもう300話以上読んだの?」とか、そういう事があることだ。
そんな加藤家で、母・私・娘が共通して叫ぶ言葉が「私をネタにするなー!」である。
母は天然ボケで、よく私のXポストのネタになっている。
娘も天然ボケで、よく私の小説の中でボケのネタになっている。あと、大食いっぷりが回転寿司の積み重ねた皿や、蕎麦屋の丼などでアップされている。
そして私は、娘の動画作成の時にネタにされている。
大岡裁きの三方一両損みたいなことになっている。母が一方的に損をしているように見えるが、あの人はあの人で読者として私を刺しにくるから一応三すくみが成立してるだろう。
殴り聖女を書いた後、公募用の小説を書こうとしているところに愛猫の死が2回重なり、気力が激減して私は1年10ヶ月という長い休みを取ってしまった(その間に同人誌は1冊出しているが)。
去年7月に執筆を再開して書いたのが、「追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します! ――でも買った工房にいた錬金釜の精霊の口出しがうるさいし、幼馴染みは過保護が過ぎる!」(通称錬金釜)で、現在母はこれだけを読んでいる。柴犬無双は「なんか食指が伸びない」のだそうだ。
そして、約2年の間に母は進化した。
なんと、誤字報告をしてくれるようになったのだ……。
「伊織さーん、ちょっといい?」
「良くない!(ちょうど書いてる最中で、離れたら勢いが止まってしまう)」
「ここおかしいんだけど」
「確認取ってる意味なくない!?」
なにがおかしいんじゃあ。今度はスマホか、テレビか、はたまたパソコンか――私はインフラ保安要員じゃねえよ。そう思いつつ母世帯である階下へ下りていった私に、ハズキルーペを掛けた母がiPadを見せてくる。
「ここ、漢字がおかしい」
母が示していたのは、錬金釜最新話だった。
誤字ですね……。
アリガトウゴザイマス。
実はさっきもお昼ご飯を食べた時に、3箇所誤字報告を受けた。
そのうち2箇所は母の勘違いであったが、残り1箇所は要確認である。
実の母に誤字報告されるWEB作家、いる?
家族にオープンすぎて、母にも娘にも小説読まれてる人、いる?
夫のフォロワーが多いからって、「小説賞出してますー!」って夫に宣伝して貰う人、いる?
馬路まんじ先生に「何その地獄」と言われたことがあるが、これが私の日常だ。
いいんだ。身の回りのこと全部、私のネタにしてやろう。作家というものはそういう生き物だ。
できれば、これからも娘が恥じることなく人に勧められるような小説を書いていこう。
そんな決意を新たにする2024年なのであった。
続・ラノベ好きの母に作品をブクマされて読まれています 加藤伊織 @rokushou
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