泡になるだろう
碧海にあ
プロローグ
空気が蒸れている。少しだけ涼しい夜風がクーラーのない部屋のカーテンを揺らした。
僕は僕の下で寝転がっている彼女を見る。今日家に親いないんだけど、という僕の幼稚な誘いで僕らは今こうしていた。
彼女が小さく身じろいで、長く柔らかい髪とゆるいキャミソールの紐が肩をなぞって落ちる。その肩の薄さが、髪の黒さがどうにもエロくて思わず唾を飲んだ。なんだかよくわからない興奮と快楽で気が滅入りそうだ。友だちの勧めで見たAV女優のエロさとは違うそれに魅了されて僕はどうしようもなく視線を反らすことができない。窓から入る街の明かりと誰かが吸うタバコの匂いが部屋の空気を大人に近づけていた。
彼女はは、と息を吐いて潤んだ瞳をこちらに向ける。それからほんの少し、本当にほんの少しだけ表情を柔らかくして口を開いた。
「私と心中してくれない?」
ささやくような、掠れた声だった。ぬるい熱に浮かされて僕は頷いてしまう。彼女といられるなら何でも良かった。
僕たちは、まだ若かった。
泡になるだろう 碧海にあ @mentaiko-roulette
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