可能性の考古学 前編

「まずは20人!20人を選んで教育訓練を受けてもらいますわ。」

今日はアリアナさんと今後の打ち合わせだ。

とにかく早く結果を出さなければならない。

「でもどうやって20人を選び出すんでしょうか。

やってみないと分からないんじゃないですか?」

そう、この時代感覚ならば恐らくそうだろう。

職人も誰だって手習いから始める。

そしてある時、10年も20年も経ってから実は向いていなかったなどと気づくことになるのだ。

夢ならば破れても仕方ないが、必ずしもそういうわけではない。

特にこのような世界では、仕事は選べるものではないのだから。


「今回は、職人の手習いのような、長く背中を見せて覚えてもらうようなことはやりません。

おおよそ4パターンに村の皆さんの才能を振り分け、その中でそれぞれに特化した方々を5人ずつ探します。

半年やってもらって、活躍できているパターンと同じ特徴の方々にその仕事を重点的に挑戦してもらいます。」


まずは図抜けた20人を何とかかき集めねばならない。

我が強い、協調性が高い、黙々とこなす、分析に優れる、おおよそこの4パターン。

ポテンシャルが低くてはダメ、優秀でもすでに活躍しているのではなく、伸び幅の大きそうな人材に投資しなければ。


面接とは考古学のようなものだ。

淡々と事実を集め、記憶を掘り起こす。

そして、まれに飛び出す宝石こそが希望。


「はい、それでは次の方どうぞ。」

即席の面接会を行うことにした。

村の幹部候補20名の募集と打ち出してみた。

時間は1人当たり20分、これをガンガン回さねばならない。

村人たちの人数は多い、しかも20人を選ばねばならない。

「この間は、大きなイノシシを仕留めたんだ」

「それは、素晴らしいですね!何人で狩りを?」

「その時は、3人いたな。」

うーん、イノシシを仕留めることがどれくらい大変なのか、ちょっと分からんな。

でも今回は武勇で人を探しているわけじゃない。

掘り起こせ、可能性を。

「イノシシを狩りに行く前日に、あなたはどのような用意をしましたか。」

「前日か?うーん、前日は狩りに行くのに向けて早めに寝たな。」

前日は特に何もしていなかったのか、そうするとイノシシと遭遇したのはまぐれの可能性がある。

話は派手だが、再現性は無いのかもしれない。

「大きなイノシシは、どれくらいの頻度で見つかるのですか。」

「月に1、2回くらいかなぁ、だから仕留めるとすごいんだ。」

「それは、いいめぐりあわせでしたね!

大きなイノシシと遭遇するためのコツは何ですか?」

「そりゃあお嬢ちゃん、経験だよ。」

経験かぁ、そりゃあ素晴らしいけどなぁ。

経験があったほうがいい結果が出るのはそれは当然なんだが、今回は新しい仕事をやってもらう話だ。

新しい仕事を覚えるために役立つ経験を話してもらわないと。

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双子悪役令嬢の他人任せ生存戦略 あまざけ @amazakeTM

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