文章を読んでみてまず「オシャレだな」と思った。
取り上げているテーマなのか、それとも引用の巧みさか、または適度に硬さのある文体によるものか。
読んでいて心地が良い。そういった作品が「創作論」ジャンルに出るとは思ってなかった。
この作品から伝わったことを、個人の感覚で言うならば「執筆と共に生きるにあたって……」というものだった。
ゴルフや剣道をはじめ、多くのスポーツの初歩で「正しい姿勢」と「脱力」を教えられる。もちろん、優れたパフォーマンスを出すためでもあるが、同時に長く楽しむためでもある。
基礎を学ぶということは、心構えを学ぶことでもある。そういった点ではこの作品は「創作術論」よりかは「創作者論」に近いかもしれない。
急いでいる方には向かない気がしたし、本当に初めてという方も「言いたいことは分かるんだけど」となりそうな気もした。
ただ、執筆を通して本気で表現を突き詰めたい……材料やテーマはこだわりたいし、その過程で心豊かな経験をしたいと思ったら、作者本人も見合うだけの準備をする必要がある。
この作品に書かれている内容はその助けになるだろうし、何ならこの作品そのものが「心豊かな経験」をそれとなく伝えているように思うのだ。
先人たちの創作論というのは、興味があってもなかなか読む機会がないもの。
こちらの作品は、そんな先人たちが書いた文章読本や創作論を、わかりやすく丁寧に教えてくれます。
そうは言っても、最近は読みやすいものばかり読んでいたので、久しぶりに脳を刺激されました。
たまには、少し硬めの本を読んだ方がいいかもしれませんね。笑
表題の「バナナの皮で滑ったことはあるか?」という発想の話から始まり、
人称篇、人物描写篇、心理描写篇、オリジナリティ篇、登場人物篇、参考文献篇、批評篇、終わりに、といった9話にまとめられています。
一万字ちょっとの短い作品ですので、小説家を目指している方にはぜひ読んでいただきたい創作論です。