人生の伴侶として小説を書くと言うこと。


 文章を読んでみてまず「オシャレだな」と思った。
 取り上げているテーマなのか、それとも引用の巧みさか、または適度に硬さのある文体によるものか。
 読んでいて心地が良い。そういった作品が「創作論」ジャンルに出るとは思ってなかった。

 この作品から伝わったことを、個人の感覚で言うならば「執筆と共に生きるにあたって……」というものだった。
 ゴルフや剣道をはじめ、多くのスポーツの初歩で「正しい姿勢」と「脱力」を教えられる。もちろん、優れたパフォーマンスを出すためでもあるが、同時に長く楽しむためでもある。
 基礎を学ぶということは、心構えを学ぶことでもある。そういった点ではこの作品は「創作術論」よりかは「創作者論」に近いかもしれない。

 急いでいる方には向かない気がしたし、本当に初めてという方も「言いたいことは分かるんだけど」となりそうな気もした。

 ただ、執筆を通して本気で表現を突き詰めたい……材料やテーマはこだわりたいし、その過程で心豊かな経験をしたいと思ったら、作者本人も見合うだけの準備をする必要がある。
 この作品に書かれている内容はその助けになるだろうし、何ならこの作品そのものが「心豊かな経験」をそれとなく伝えているように思うのだ。