第5話 秘儀の呪文は〝りちま〟と〝ろひま〟(後日談)
その
「予定より遅くなってしまって、すまないな。急な割り込みが入ってしまってね」
「かまいませんが。いいんですか?」
「いいんだ。あれは大した
姓が微妙に異なるが、
それと分かれたのは、はるか昔。
鎌倉時代のことなので、そちらはそちらでその家が宗家のような流れが
ここ数世代は血を混ぜてないので遺伝子的にはほぼ他人なのではないかとも思うが、両家の交流はいまもとぎれることなく維持されている。
「先日はほんとうに残念だった。若いのに倒れた原因もわからないそうだね」
我が家の末っ子が逝ってから初七日にもならないのに、もう過去形か……。
正直ふれて欲しくない事柄でもあったが、こうして手を合わせに来てくれたのだから避けられない話題でもある。
「その節は訪問される予定になっていたのに、急なことで失礼しました」
「いや、当然のことだろう。息子さんの急報が入ったのだからな。君が気にすることじゃない」
悪い人ではないが、利には
このタイミングでの訪問——目的は他にありそうだが……。
私が憶測した通りで。
線香をあげ、茶の間に通された
「悪いことだけ続くものじゃないさ。ときに——
「ぇえ、まぁ。いつの間にかね」
「それは素晴らしいな! 過去には
「そうピンポイントで見たいものが見えるものでもないのです」
「いや、そういうものらしいが……。それっぽい数字が見えたら、ロ〇くじでも買ってみることだよ」
その秘術の呪文は、
現在を基軸とした〝りちま〟と〝ろひま〟。
古い記録にあったものとも違うが、息子の凶報を聞く直前まで、なんとなしに《翡翠の
とうめんは唱える気分になれそうもないが、気が向いたらまた向き合ってみることにしよう……。
視鬼 ~未来と過去をかいま見る者の手蔓~ ぼんびゅくすもりー @Bom_mori
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