普通に生きられない人間の救いとは

普通に生きられず、人生に絶望しても、それでも世の中は普通に沿って回っている。
だから普通の人々は無職の主人公に働けと言う。
壊れた心を治せと言う。
目標を持てと、生きろと言う。
だがその言葉はどれも届かず、主人公はずっと行き止まりで立ちすくんでいた。

しかし一緒に死のうと言ってくれる人が現れた途端、主人公は行き止まりから抜け出した。
生ではなく死へと向かって、未来を見ずに歩きだす。
愛し合って生きるのではなく、苦しみを共有して命を絶つ。

これは死が救いだと、そう思うしかない人間の心を生々しく描いた小説であると感じました。
この解釈が正しいのかは分かりません。
ですが他にない、胸を締め付けるような魅力を持っています。
それだけは間違いのないことだと思います。

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