【ショートストーリー】愛と死の螺旋、永遠の絆
藍埜佑(あいのたすく)
【ショートストーリー】愛と死の螺旋、永遠の絆
第一章:運命の出会い
ひどい雨降りの夜、忍び寄る闇に包まれた古い屋敷。
増え続ける蠢く幽霊たちが悲鳴を上げ、壁には悪霊の恍惚が奇妙な模様となって浮かんでいた。
その屋敷の奥深くに、少年ジュリアンがひとり佇んでいた。
漆黒の髪が彼の頭を覆い尽くし、闇の中でさえもその輝きが際立っている。彼の瞳は碧の悠遠なる深さを持ち、冷たさすら感じられる。まるで氷のように透明でありながら、同時に灼熱の情熱を秘めているかのようだ。
ジュリアンは若さと脆さが同居したような容姿をしていた。その肌は青白く、細く繊細な身体はまるで一陣の風に吹き飛ばされそうな危うさがある。しかし、その中にも生命の輝きが宿っており、彼の存在は不思議と人々の目を引くのだ。
そしてジュリアンは知っていた。不治の病に侵された自分の命の残り時間を。
ふと、彼は不思議な存在を感じ取る。
闇に浮かぶ
彼女の髪は鮮やかな金色であり、美しい波のような髪の流れが優雅さを際立たせている。彼女の眼差しは優しさと哀しみを併せ持ち、寂しげな輝きがその瞳から溢れ出ている。 彼女の肌は乳白色であり、まるで雪のように純粋で透明感がある。彼女の身体は華奢でありながらも、一瞬脆さを感じさせるその姿には強さと生命力が宿っている。
彼女はエヴァンジェリーヌと名乗った。彼女は永遠の命を背負った不老不死の少女だった。
ジュリアンは彼女の美しさに心を奪われると同時に、彼女との恋に命を懸ける決断をする。
彼はエヴァンジェリーヌと共に過ごす限られた時間を、全身全霊で愛に捧げることを誓ったのだ。
第二章:禁断の果実
ふたりは血塗られた庭園で逢瀬を重ねた。
ジュリアンの死期が迫っている中、彼は生きる喜びをエヴァンジェリーヌとの愛のみに見出していた。
ある晩、二人は星降る夜空の下で、幻想的な音楽が流れる中、凍りついた池に向かって舞い踊った。彼らの足音は氷の上で物哀しい音色を奏で、まるで死と愛が混ざり合ったような狂気の美しさを放っていた。
やがて、エヴァンジェリーヌはジュリアンに告げた。
「あたしの力であなたを不老不死にすることができる。けれど、それは禁断の行為。あなたは永遠に背負わなければならない呪いを背負った者となるの……それでもいい?」
ジュリアンは迷いながらも、エヴァンジェリーヌの言葉に心を奪われていく。彼は自分の命を捧げる覚悟を決めた。
第三章:魂の融合
深紅の血が滴る室内で、ジュリアンはエヴァンジェリーヌにその唇を捧げた。
彼らの運命は結ばれ、互いの魂が一つとなっていった。
血の契約を果たすと、小さな言葉と共に彼らは混沌とした暗闇に飲み込まれた。彼らの存在は不可解なまま、時空を超え、あらゆる次元に広がっていった。
ジュリアンとエヴァンジェリーヌは永遠の旅に出発した。
彼らはさまざまな時代を駆け抜け、人間と死との狂気の螺旋に巻き込まれていく。
彼らの恋は続いたが、それは生と死の狭間にある不気味な風景の中で営まれるものだった。彼らの体は時々透明になり、鮮烈な花の香りが辺りに漂うこともあった。
時が経ち、今度はエヴァンジェリーヌが死の扉に近づいていく。彼女はジュリアンを不死にすることで自分の魂を削り続けていたのだった。
ジュリアンはその存在が仄かに薄れていく様子に胸が締め付けられる。
しかし、彼は永遠の愛を守るため、悲しみを抱きながらもエヴァンジェリーヌと共に旅を続けた。
第四章:終わりなき宿命
最後の瞬間、二人は空っぽの墓地に立っていた。衰えゆくエヴァンジェリーヌの手を握りながら、ジュリアンは心の底から彼女への愛を叫んだ。
「私たちは永遠の絆で結ばれている! この世界も次元も超えて、君と共に生き続けよう!」
エヴァンジェリーヌは微笑みながら、彼に寄り添って息を引き取った。
しかし、彼女の存在は淡い輝きを失うことはなかった。
ジュリアンは彼女への思いを捧げながら、自らの命を絶った。彼の魂はエヴァンジェリーヌと交錯し、二人の存在が一つとなった。
(了)
【ショートストーリー】愛と死の螺旋、永遠の絆 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi
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