今や一つのテンプレートとなった異世界転生/転移要素。前世の記憶を保持したまま、異世界に転生したり転移したりすることを指します。
この作品は、そのテンプレ要素を上手く仕掛けに使っているなと感じました。
世界を救った元英雄には一つの未練がありました。その未練を断ち切る為に女神に元いた世界に再度転生させてもらうように交渉しますが、ポンコツ女神のせいで色々と遠回りをする羽目に(笑)
転生は前世の記憶も引き継がれますので、彼は目的を果たすために転生や転移を重ねて少しずつ自分の目的へと近づいていきます。
彼が断ち切りたかった前世の未練とは何なのか。
前半の爆笑できるコメディパートとは一転、ラストは温かさと、これからの希望に満ちた優しい結末でした。
短いながらもよく練られた、完成度の高い作品です。
異世界転移の始まりと言えば、やはり神の啓示を受けるシーン。
世界を救ってくれとお願いする神の姿を見ると、これこれこれとなる人も多いだろう。
この作品も女神が二人の男たちに神の啓示をするところから始まる。
厳かな雰囲気の中始まりを迎えるが、三十路の男が一気にぶち壊す。
女神をポンコツと罵声を浴びせ、女神もまた予期せぬ来訪者に慌てふためく。
そう、予期せぬ来訪者の彼こそが、この作品の主人公だ。
彼は元々とある世界の勇者であり、異世界転移をして、ある願いを叶えるために転移を繰り返していた。
軽快でテンポの良い始まり、女神と彼のやりとりに思わず笑ってしまうだろう。
そして、最後まで本当に楽しめる。
これ以上はネタバレになるから言えない。
けれど、これだけは伝えたい。
彼の願いがわかる時、
きっと読んだ貴方はこの作品をもっと好きになるだろう。
是非、読んでほしい作品です。