詩も史も糸も死も……すべて紡がれて一着の服になった。

お見事な作品でした。

最初の話は皮肉が効いており、ものすごく笑えました。
次の話は納得感があり、ものすごく笑えました。
最後の話はあまりに感動的で情緒が乱されました。もちろん良い意味で。

『服』と言う一つのテーマを主軸に別々のお話が繋がりを持って描かれています。
一、二話は敢えて拡大解釈したお話で一見するとオシャレを皮肉った感じもあるのですが、三話は服やオシャレを愛するお話で、全話見通すと『服』の核心を突いている以外に他ならない作品なのだなと納得できます。

ジャンルはSFですが、堅苦しい感じはありませんし、かといって物足りない感じもない。それにこの作品ならではの描写がより作品の濃度を高めてくれています。
5千字強でこの満足感ですから凄まじいタイパ(タイムパラドックスではない)だと思います。

笑える話も感動する話も全話「こういうSFが読みたかった!」と思わせてくれる内容で、構成もまた秀逸でした。秀逸と言えばエピタイも。読む前は「どういう意味だろう」と興味をそそられ、読んだあとは「なるほど!」と膝を打ちました。

最後はまさにオチを着るように——落着したのも、見事と言うほかありませんでした。