第2話
冷たい鉄のドアが大袈裟に動いて開いた。ドアが俺を手招きしているのだ。間違いない。頭で心で確信して意気揚々とステップを踏んだ。ほんの数メートルほどの箱のなかに吸い込まれると、男は最早獲物を捕らえた獣であった。すぐに女に向かって一種の、怒鳴り声のような鋭い音をたてた。へその奥の方が煮えたぎっているのが分かる。
「君...君だ...。君だけだ、俺には...。無論覚えているだろうね...君も離れて気がついただろう...。」
男の目には今にも割れそうに赤くヒビが入った。吐き出された透明なはずの空気は、不思議と形がハッキリ見えた。
「お客様、もう発車いたしますので、お立ちのままだと危ないでしょう。席にお戻りください。」
冷たく鋭利な女の声はむしろ興奮を高めるための材料、いわば血液となった刺激。された脳はまるで自分のものではないかのように予測不可能な行動をとるであろう。男はその痩せた細長い手で女の頭を強く抑え、粘膜を重ね合わせるようにしてみた。知らない味と匂いが全身を巡り、足先まで寒さを忘れて悦楽にひたった。
熱が溜まらない 終始 @syushi---
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