第3話

「お待たせ。心の準備はできた?」


「…ひとつ条件があります」


「なるほど、その条件って?」


「あなたも、私に隠し事していますよね。その隠し事を交換条件で教えてくれませんか。ただし、私が先行でお話します。」


彼は悩む素振りを見せたが、案外すぐに返答をした。


「いいよ。その代わり、話したところで君が僕に何かしようとしても何もできないことは、多分君自身もわかるだろうから期待はしないでね。」


「わかりました。」



そうして、私は住んでいる場所や年齢などの基本的なことを明かしていった。そしてなぜあんなところにいたのかということも説明したが…


「ちょっとまってスケールが追い付かないや、もしかしてこれ全部夢?」


「夢にしては長いしリアルですね。」


「だよね~まぁとりあえず顔でもつねっとく?」


「いやそんな安易にイケメンフェイス傷つけないでください」


「イケ…?」


事実なのは間違いないが、彼はすんなり飲み込めるはずもなくひたすらに唸り続けた。


「とりあえず、君は“ニホン”っていうところに住んでたんだけど、

足滑らして落下して、落ちた先があそこってこと…?」


「そうなりますね。」


「じゃあなんで言葉わかってるの?“ニホン”も同じ言語だったってこと?」


「それがわかんないんです。多分私の順応性が高いんですよ。」


「すごいね。」


こんな感じで理解までめちゃくちゃ時間がかかりそうなので、気になる点を確認しておく。


「こちらからも確認なんですけど、この世界には魔法があって、ほとんどの人が魔力をもって生まれ、使うことができる…でしたっけ?」


「おおむねその解釈でいい。」


「ちなみにさっき部屋から光が漏れてたんですけど…」


「あー…見えてた?というかやっぱ見えるんだ。それは恐らく僕がさっき魔法を使っていたからだね。本来なら部屋の明かりがあれば気にならない程度なんだけど、その人の魔力量と反比例して見える光の強さが変わるらしい。」


「魔法と魔力…ということは、魔力量って先天的なものですか?」


「半分合ってて半分間違ってるかな。実際訓練を受けたりコントロールできるようになると、格段に魔力量は上がる。でも人それぞれ使える魔法も違うし、コントロール力とかももろもろ同じ人はいない。」


「私みたいな異世界人は基本魔力はないんですか?」


「それがね、文献に残っているのも極わずかしかないんだけど、異世界人が召喚されて聖女とかになることも他の国でもあったみたい。というかそもそも魔力が無い人なんて確認されていないんだ。」


「え?全員が少なからず魔力を持っているってことですか?」


「普通はね。」


「ちなみに、わたしってどれぐらいなんですか?」


「大変失礼なんだけど、さっき軽く鑑定させていただいた。結果は」



『魔力:無し』



「だった。」


……え?これってまずいのでは?

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