第4話

「え?魔力無し?そんなことってあるんですか?」


「いや、だから僕も混乱しているんだ。魔力の無い人なんて前例がない。微量でも全員魔力はあるはずなんだ。」


「もしかして…私が落ちた奈落とこの世界が繋がっていて、意識も体もそのまま異世界に来ちゃったとか」


「転生というよりただの転移ってこと?それならありえるね。魔法を使わない世界で生をうけているなら魔力がないのも無理はない。今まで異世界からきた聖女や勇者はなんらかの形で転生しているか、あるいは類い稀な魔力持ちだったのかもね。」


「でもまぁ魔力がなくても生きていけるならそれほどでも…」


「日常生活をするにも生活魔法が必須だし、なにより魔法が無い人がいるってことが知られると見世物として拘束されるかもしれないね」


「拘束される…」


さすがの私でも拘束されて自由な生活ができないのはごめんだなぁ


「まぁ私の魔法が無いことは解決できそうにないので次、えーと」


「そういえば僕の自己紹介をしていなかったね。ええと、僕の名前はライナス。気軽にランスとでも呼んでほしいな。普段は今日みたいにいろんな町をめぐってショーをしているんだ。」


「え、じゃあこの家にもほぼいないんですか?」


「いや、転移魔法を使ってるから移動は問題ない」


「異世界便利~」


「じゃあここからは僕の話、僕はとある病にかかっているんだ。」


話を要約すると、ランスさんは『魔力超過症』という難病にかかっているらしい。症状は魔力が体内で生産され続け、人体に害を与えてしまうらしい。私が見た光は、ランスの魔力の一部を魔道具に放出し一時的に体内の魔力量を減らしていたのだとか。物心ついたときには発症しており、家族からは怪訝な目で見られていたことから自ら家を飛び出し、いまの生活を送っているのだそう。


「つまり私に何もできないと言っていたのは、自分は医者にも治療不可能と言われている病気をもっていて対処法がないから…?」


「そう。ここ数年は特に増加量が増えていて、ほぼ毎日魔道具を頼っているけどそろそろ限界かな。長年放出できていない分が蓄積して普通の魔法を使うと力が強すぎて他人を巻き込む可能性もある。」


「そんな…」


魔力を放出しないと死んでしまう、かといって話を聞いている限り普通に魔法を使うのも困難…確かに、私の出る幕はなさそうだ。チート魔法で病気を直すこともできない。なにせ魔法が使えないんですから。魔力無いし。


「あ」


突然すっとんきょうな声をあげたのはランスさんだった。


「梨蘭って魔力ないよね?」


「さっきランスさんがそう言いましたね。」


「魔法使いたい?」


「そりゃ魔法が使えるなら使いたいですよ。魔力無いですけど。」


「いい方法を思い付いた。」


「え!?やったぁ魔法使えるようになるんですか~?魔力無いですけど。」



「だから君にあげるよ。」


「え?」


「僕の魔力を、君にあげるんだ。」



……へ?なんですって?

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