第2話 幼馴染の日々

「おーい、キビそんなところでジッとしていないで、こっちへ来て手伝えよ」

 傍らの木陰で空をじっと見ているキビに向かって声をあげた。ヨモは収穫した稲の束を汗をかきながら運んでいる。ヨモは村のため少しでも働くことが常だと思っていた。キビは村の長老たちからの話を聞くことが毎日の楽しみだったのである。十歳とうになる頃の二人はこのような様子であった。

「ヨモはよく働くな。私はもっとこの世が知りたいんだ。知恵があればもっと暮らしは楽になるはずなんだ」

「そんなことを言っていいる間に少しでも体を動かせば、もっと役に立つぞ。ほんとにお前は怠け者だな」

「ヨモ、キビをいじめないでよ。彼は器づくりは熱心にやっているじゃない」

 二人を見ていたヒミがキビに助け船の言葉を投げかけた。

「ヨモ、早く運ばないと雨が来るぞ」

 キビは立ち上がりヨモの元へ向かった。

「何を言ってるんだ、こんなにいい天気だぞ」

 ヨモは空を見た。風が強くなり西の空から暗雲がみるみる垂れ込めてきた。キビも稲束を運び始めた。あらかた収穫を終えむしろを掛けたところで、キビの言った通りに雨が降り始めた。

「どうしてわかったんだ、雨が降ることを占ったのか」

「違うよ空の雲の流れだ。ヨネ婆に教わったことさ」

 少し得意げなキビであった。雨宿りに三人は近くの農具小屋に身を寄せ話し始めた。

「ヒミはしばらくいなかったけどどこに行っていたんだ」

 ヨモは一週間姿を見なかったヒミが気になっていた。

「東の金字塔ピラミッドでタキリのまつりの祈祷のお手伝いよ。スナザちちが命じたの」

 タキリはヒミの歳の離れた姉、この村の巫師ふし、シャーマンであった。キビは目を輝かせて

「どうだった。僕も行きたかったな、ヨネ婆が言ってたけど不思議な力があふれる所だって」

「タキリと一緒にお祈りしていたら、見たこともない景色が頭の中に流れ込んできて気持ちが悪くなって倒れちゃったの」

「今は大丈夫なのか、なんともないか」

 ヨモツはヒミのことが気になって仕方がないようだ。

「ありがとう、ヨモはいつも優しいのね。キビに比べて」

「僕だって心配さ。で、どんな光景を見たの」

「やっぱり、全然心配してくれてない」

 キビから顔を背けてしまった。

 三人の関係はこの頃から万事このようの調子で保たれていたが十四の時の出来事でキビとヨモに少しづつ溝のようなものができてしまったのであった。

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魔狼記 ★転生した陰陽師外伝 珠玖こんきち @shuku

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