第131話 魔王認定

 俺は、エルフの女と骸骨タイプのモンスターを連れてきた。


 エルフの名前はマジメット。眼鏡をかけた真面目なタイプで、カクガリィダン同様の魔王軍親衛隊長だ。見た目はそれなりに可愛いかな。

 ガイコツはスパイガイコツという名前で、尖兵専門のモンスターだ。彼女のことをよっぽど信頼しているのだろう。彼女の体にしがみついている。


「ザ、ザウス! 真面目な話。わたくしたちを殺すのですか?」

「ひぃいい! マジメット様ぁあ。怖いコツゥウウ。殺されちゃうコツゥ!」


「いや。おまえたちを殺してなんの得になるんだよ?」


 俺はマジメットに事情を伝えた。


「え!? わたくしが次期魔王ですって!? なぜですか??」


「おまえは真面目だからな。それ以上でも以下でもない。おまえが魔王紋を受け取り、魔王領を束ねるんだ」


「ええええええええええええ!? こ、困ります! 他を当たってください!!」


 やれやれ。

 普通は喜ぶもんだがな。

 棚からボタ餅。

 魔王になれるなんて、宝くじが当たったくらいの大出世なのにさ。


「どうして拒むんだ?」


「責任が大きすぎます! 魔族たちの将来をわたくしが担うなんてとてもできそうにありません」


 ふふふ。

 真面目だな。


 実は彼女は最後の恋愛対象のキャラだったりする。

 主人公である勇者に恋をしてしまう設定だ。

 この世界の勇者は奴隷になったセアだったからな。あんな奴とどんな風に恋に落ちるのかは興味があるが、物語りの大筋は大幅に変更されてしまった。

 もう、彼女がセアに惚れることなんてないだろう。

 俺的には嫌いなキャラじゃなかったな。もちろん、恋愛パートはしっかりと攻略させてもらった。

 とにかく真面目で部下思い。彼女の性格はゲームと一緒だよ。その証拠にスパイ骸骨が離れようとしないもんな。


「と、とにかく。真面目な話。わたくしには荷が重すぎます。丁重にお断りをさせていただきます」


 彼女のことはよくわかっている。

 理由を提示してやるとやってくれるはずだ。


 俺は空中に映像を表示させた。

 それはヨルノ村の定食屋。


「な、なんですかここは? 真面目な話。店内にいるのはわたくしたちのようですね」


「これは、店主の証言に基づいて、 大賢者の輝く部屋ワイズマンルームの力で過去の状況を呼び出したものだ。映像はその時のまんまさ」


「あ、マジメット様がスーブッタを食べてるでコツ」


 そう。

 この後が問題なんだよな。

 彼女は怒って、店主の顔を水魔法で包み込んでしまうんだ。


『真面目な話。スーブッタはパンに合うおかず! パイナプールはデザートです!! 一緒にするなんて言語道断! 不謹慎極まりない!! 今後、客に提供する時は、別々で分けるように! いいですね!?』

『おぼ、おぼ、溺れる! ゴボゴボ!』

『返事は!?』

『へ、へい……。そうしやすから助けて……ゴボゴボ』


 まぁ、店主の証言どおりだな。


「酷い態度だな。スーブッタにパイナプールが入っているか入っていないかで揉めるなんてな。店主が怒るのも無理はない」


「こ、これは……。真面目な話。不可抗力です」


「おまえの好みで殺されかけた店主が不憫だよ」


「うううう……」


「罪滅ぼしだ。魔王をやれ」


「ええええええええええええええええ!?」


「やらなければ殺す」


「ふ、不当な圧力ぅうううううう!!」


「当然だろ。不当な圧力には不当な圧力で返ってくるもんなんだ。いわば因果応報だな。おまえが店主を攻撃しなければ、こんなことにはならなかったんだ。ヨルノ村は俺の領土だからな。そこの店主に暴力を振るったのならば、それ相応の報いを受けてもらう」


「うううう。わ、わかりました。や、やりますよ。やればいいのでしょう」


「よし。では、おまえに魔王紋を託す。ついでに俺と主従契約も結ばせてもらうからな」


「うううう。レベル100 那由他なゆたに歯向かって良いことなんて何一つありません」


「そう悲観するなよ。魔王の仕事だって楽しいさ。おまえは真面目だから、きっとやり甲斐が出る」


 俺は彼女に魔王紋を移した。

 ついでに、主従契約も結ばせてもらう。彼女の右手の甲には魔王紋と魔公爵紋が輝いていた。


「あああ……。真面目な話。大役ですよ。まずは魔王領の再建。部下モンスターはヘブラァに吸われてしまったから、 湧き出る怪物ワイテデールを時空の穴より出して魔王軍を形成して……。居住区の改善と魔界補償も充実させましょうか……。ああ、やることがてんこ盛りです」


 ふふふ。

 本当に真面目な奴だよな。

 これなら良い部下になってくれそうだ。

 あ、そうそう。


「全滅した魔王軍の話だがな。あれはなかったことにするつもりだ」


「はい? なんのことですか?」


「要するにさ。アイテムコピー。メタルパイナプール」


 俺の手に乗っかったのは鉄肌のパイナップル。

 これは、どんな状況でも復活ができる究極の回復アイテムなんだ。


 俺はそれを天にかかげた。

 すると、メタルパイナプールは強烈な光を出して消滅。

 現れたのは魔族の大群だった。

 それは魔王に吸収された魔王軍の面々。


「ま、真面目な話……。夢でしょうか?」


「マジメット様! ヴァンパイア族のブラディアンや、邪神龍 ジャルメ・ゲバザバハマールまで生き返っているコツ! あ! 魔王軍参謀のフグタールだっているコツ。こいつらは吸魔の法で吸収される前に殺された魔族コツ!」


 面倒だったからな。

 ここ半年で命を落とした魔族たちを軒並み復活させてやった。

 加えて、 大賢者の輝く部屋ワイズマンルーム 同期シンクロしてな。今までも経緯も把握するようにしてやったよ。


「よし。これで全員無傷ってことだな」


 ふふふ。

 魔公爵領の傘下に魔王領が加わった。

 俺の勢力は更に拡大したってことだ。


 突然、マジメットが大声を張り上げた。


「真面目な話。流石でございます!! 我ら魔王軍。ザウス様に受けた恩義は生涯をかけて返させていただきます!!」


 一斉に膝をつく。


ザザッ!


 と、その揃った音は壮観である。

 数万を超える魔王軍が俺に向かって一同に頭を下げているのだ。

 うーーむ。これは気持ちがいいな。



────

読者の皆様に重要なお知らせ。

この度、今作の書籍、2巻が発売されました。

2025年、9月17日。電撃の新文芸からです。

イラストは片桐先生。

勇者セア編ついに完結!


1巻は6割程度書き下ろし。

2巻は8割程度書き下ろしです。


WEBでは10万字程度のお話が、書籍では20万字以上に加筆されております。

ああ、もちろん、不要な肉付けは一切ございません。書籍用に超面白さ増し増しでございます!!

書き下ろし部分が多いのでWEBとはまた違った印象を受けると思います。

ざまぁ増し増し! キャラの深掘り、ラブコメ、無双、爽快感が超絶アップ!

ドラマチックで、笑いあり、ハラハラありの最強無双譚。

よって、タイトルは『異世界最強の中ボスはレベル999』となっております。

読みやすくスラスラ進んじゃう。ノンストレス小説を意識しました。

とても面白いので、ぜひ読んでいただきたいです。

無料お試し部分を読んでいただくだけでも、その雰囲気が伝わると思います。

下記にリンクを貼らせていただきますね。


https://dengekibunko.jp/product/isekaicyuboss999/322411000076.html


現在、在庫切れの書店もあるようです。

好評発売中!

どうぞよろしくお願いいたします。

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【書籍発売中】転生した中ボスはレベルを999にして主人公を迎える〜勇者はカンストレベルを99と見誤っているようです〜 神伊 咲児@『異世界最強の中ボス』書籍化 @hukudahappy

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