主役二人がどちらもズレてるから、一周回って噛み合ってるのが面白いです!

 主人公の千代には割とシリアスな背景があって、弟のために神様の生贄になろうという覚悟から物語が始まるのですが、神様が食べてくれないことで真剣に思い悩んで風変わりな行動に走る思い切りの良さは、まさに主人公の器。読んでるほうはツッコミが止まりません! 神様も困っています。

 そしてもうひとりの主役、神様である銀嶺も銀嶺で、荒ぶる龍神という触れ込みながら、なんだかめっちゃ優しい。出会って即溺愛かと思わせる一方で、事あるごとに千代をいじめていた叔父一家とか村とかを滅ぼそうとする、人には推し量れない超越者ぶりでこちらを振り回してきます。千代も引いてます。

 そんな登場人物たちのテンポにノッて読み進めていくと、あれよあれよという間に運命の物語が動き始めていたり、お互いが隠している思惑や気持ちが本当の意味で噛み合う瞬間が来たりして、実に気持ちよく物語を楽しむことができます。

コミカルな導入から、クラシカルな読後感へと、つなぎ目無く読み進められる展開が素晴らしいです。

 気軽に読めて、ほっこり、しっとり、すっきりできる、そんな和風ファンタジーだと思います。毎回の更新が見逃せません!