第48話 最後は、
まさか俺が黒沢の軽はずみな行動で二股のような状況になったのと同じく、妹が姉の巫女さんにそそのかされて裸で男を誘惑する術なんて習っていたとは……。
なんて迷惑な姉弟だ。
兄貴として、妹に変なことを教えないでくれと巫女さんには注意すると。
「ごっめーんっ! まさかハミちゃんがそこまですると思わなくって」
と舌を出して謝ってきた。反省の色が見えない。
黒沢に関しては、俺の落ち度もある。だがこの巫女のお姉さんは……中学生相手に変なことを教えるという、大学生としてどうなんだと言わざる得ない。
「でも、お兄ちゃんがあたしの裸で興奮したのは事実だし……」
「えっ、いやでもそれは」
妹が嬉しそうにしているので、どうも怒るに怒れない。
「オレが思うに、妹かどうかよりも中学生というのが問題じゃないか」
「黒沢。違うんだ、俺の妹はもう中学生とかそういう次元じゃないくらい可愛いんだ。あと俺もまだ高校生で未成年だから」
「……まあ、そんな細かいことを言うつもりないけど」
黒沢も余計なことを言いそうだったのでにらんでおく。こいつだけの責任にするつもりはないが、もう少し反省して欲しい。
「まあまあ、そこまで言うならお姉さんが一肌脱ぐから。ヤヤ君には迷惑かけたみたいだし、お詫びとしてお姉さんの巫女をあげるからね?」
「津々羽さんっ!?」
「巫女をあげる……?」
よくわからないが妹が怒っているので、巫女さんの方は任せよう。
ともかく脱がれるのはもう勘弁だし、黒沢姉弟が来たおかげで話も収まった。
収まったのだが……これでいいのか。
結局、俺は正直に妹の裸への気持ちは伝えたが、それ以上のことはなにも言えていない。妹は妹だ、と言ったきりだった。もちろん、その気持ちに変化はなく、一つも偽りはない。
黒沢姉弟と別れて、二人で家に帰る。
さすがに走ってではなく、並んで歩いて。
「あのね……あたしも、ごめん。……いきなり裸になってびっくりしたよね?」
「びっくりはしたけど、俺もほらびっくりさせちゃったし」
「……お兄ちゃん、二股はどうするつもりなの?」
「えっ!?」
あくまで二股と言っても、正式な二股ではない。
だが妹の真意がわかった以上、俺が女慣れする必要もなくなるわけで、つまりこれ以上審査もいらなしし――。
「……わかってもらえるか怪しいけど、正直に話してみる。それで、まあ諦めてもらうかな。俺にはまだ彼女とか早かった」
「そっか」
「だから、
「……考えてくれるの?」
俺は頷いた。考えるだけ、と適当に言葉だけ並べているわけではない。ただまだ本当に自分の気持ちもよくわかっていない。
「……考えによっては、お兄ちゃん、あたしのこと抱くの!?」
なので、こんな質問をされると困った。なんだろう、兄貴として妹がこんなことを言うのは切ない気持ちになる。相手が俺というのも複雑だし、妹はもうそんなに大人になったのかと。
「むふふっ、お兄ちゃんあたしの裸に興奮したって言ってたもんね……。これは孫が楽しみだ」
「おい、さっきから自分でなに言っているかわかってるか? 兄貴として言って置くが、波実香にもまだまだそういうことは早いからな!!」
「妹の体に欲情するお兄ちゃんのくせにそんなお堅いこと言ってぇー」
「……いやいや、妹の体っていうか……まあ年頃の女性の裸な」
俺は特に考えもせず訂正してしまったが、
「え?」
「ん?」
「……お兄ちゃん、それって結局……あたしのことが好きってわけじゃないの?」
「妹のことは大好きだけど」
「そうじゃなくて……待って、じゃあ他の人の裸でも興奮するの!?
「…………」
言わなくていいことを言ったかもしれない。
浮津さんどころか
――え、普通だよね、思春期の男子高校生だよ、俺!?
ただまあ、妹のこと、家族として以外の気持ちでも少しだけ意識したのは本当だった。
それが全裸のせいなのか、告白のせいなのかはわからない。
個人的には、後者であってほしい。
「……まだ話し合いが必要だよ。今度お父さんとお母さんいないときにじっくり聞かないと」
「あの、いいけど、できたらもう服は着てね?」
「お兄ちゃん、あたしが服着ているのと裸なのどっちがいいの?」
「どっちとか選ぶものじゃないと思うけど……基本的には着衣でいていただけると……」
いつか、また裸の妹と向き合う時が来るのだろうか。
しかしなんにせよ、真面目な話をするときに相手だけ全裸というのは、違うと思う。俺が冷静に話し合えない。
「なんで!? あたしの裸最高だった、今年で一番興奮したって言ってくれたのに!?」
「いやいや、服着てないと普通に話し合えないんだって!!」
だから多分、服を着て居なくちゃ話せない話もあるし、服を脱がなくては伝わらない覚悟もあった。
――ということだと思う。
義妹が裸族になってから、クラスの女子がおかしい 最宮みはや @mihayasaimiya
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