第2話
全裸なんだから見る訳にはいかないと断ろうとしたのですが、離れてるし傘で隠れてるから大丈夫と促されたので、ブランコに乗ったままそちらへ振り返りました。
遠く、グラウンドの入り口に、全裸で前に黄色い傘を差したへっぴり腰の幼馴染が、豆粒みたいにポツリと現れます。
笑い死ぬかと思いました。その光景に私の脳は、勝手に漫画の集中線を足して幼馴染のその姿を強調していました。弟も、自分がどんな姿で歩いていたかその幼馴染の姿でイメージ出来たようで、ゲーラゲラ笑います。私達の笑い声が幼馴染にも聞こえたようで、「ヤバい!」だの「誰も来てへんよな!?」だの言っています。グラウンドの中央へ目をやれば、彼の服がぽつぽつ散らかっていました。誰も来てないから大丈夫だよと答えると、幼馴染は今の内にゴールしたいんだろう、でももし誰か来たらどうしようという躊躇いも滲ませる焦ってるのにモジモジした奇怪な動きで歩き出したので、私はそこで視線を外しました。ずっと見てたら傘下ろして服着れませんからね。なんて面白い遊びをしてたんだろう幼馴染と弟は。やっぱり私も男ならやりたかったです。
ゴールした人数が増えて来て、残りのメンバーはあと一人。服を置く係をしに林道へ引き返していた弟が、ニヤニヤしながら公園に戻って来ました。何故か最後の一人の服の一つを持っています。それはトランクスでした。
公園もゴール地点ですからギリギリコース内とも言えますので、公園に服を置く事をルール違反とは言い切れません。ルールの隙を突いた弟は、これを公園に置こうと言いました。他の服は正々堂々コース内に置いて来たそうなので、まあパンツぐらいならいいかと私は許してしまいました。笑い過ぎて馬鹿になってたんだと思います。参加してないのに超面白かったから。ズボンとシャツさえ着てれば表面上は普通の小学生だから、事情を知らない人に見られてももし責められるのは、トランクスを持ち歩いてる弟だしって。
幼馴染とは言え突然男子のパンツを見せられたのでキャーぐらい言えばよかったかもしれませんでしたが、家の中で弟と遊んでる時に、よく干し終わったばかりの彼のトランクスを投げられたり、もう一人の弟の洗濯済みブリーフを水泳キャップみたいに被せられたりしていたので、何も思いませんでした。
でもすぐに見つけられないような場所には置いたら駄目だとは忠告しました。
その強烈な光景に我に返った私は、いや私は何とも思わないけれど幼馴染は恥ずかしいかもしれないと気付きましたが(全裸で傘差して外歩いといて?)、触るのは何か嫌で放置しました。やんわりと弟にそれはやり過ぎじゃないかと言いましたが、「いけるいける!」と返されゴーサインが出されました。まあ、いつも私達って一緒でしたからね。馬鹿な事も沢山してますし、これぐらいじゃ怒らないとは皆分かってましたけれど。
ノーパンで帰って来た最後の幼馴染は困った顔で、グラウンドにいた時点から私にもうっすら聞こえていた「パンツだけ無いんやけど!?」を繰り返しながら私達を見回しますが、すぐに滑り台の天辺で逆様になってるトランクスに気付き、「うおおおい!?」とびっくりしながら走って回収していました。犯人の弟は追い回されてシバかれていました。誰にも見つからなくてホントによかったァー! おしまい。
よい一日を。
全裸男子小学生達が傘で股間を隠しながら近所に散りばめられた服を回収する話。 木元宗 @go-rudennbatto
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