ヨーロッパ中世の森。
白く冷たい季節。
凍り付いた河で妹のグレーテルが、崖下で兄のヘンゼルが遺体になって発見される。
二人に何があったのか――。
訳あって、貴族の青年リウドルフが調査に乗り出す。
浮かび上がるのはグレーテルを取り巻く、閉鎖的な村の環境。
調査を進めるリウドルフにも、抱えている想いがある。
女たちはなぜ、魔女のごとくならざるを得なかったのか。
タイトルの『届かなかった背中』は一つではなく、幾層にも折り重なって、物語の襞の合間から血の気のない肌を覗かせます。
一編の映画を見るような、筋も雰囲気も素晴らしいお話で、没頭させてくれます。
ミステリーですが、あまり構える必要はなく、むしろ物語世界に入り込んで、登場人物たちの動きを固唾を呑んで見守るのが良いでしょう。
とってもお勧めです。